一般社団法人 日本植物防疫協会 理事長 早川 泰弘

2024年の病害虫の発生について特筆すべきは、果樹カメムシ類の大発生である。38都府県から警報3件、注意報58件の計61件が発表され、過去10年で最多となった。次に斑点米カメムシ類については31道府県から39件の注意報が発表され、これも過去10年で最多となった。またハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウ、ヨトウムシ、オオタバコガなどの発生も多く、特にハスモンヨトウとオオタバコガについては警報が1件発表された。トマトキバガはこれまでに全都道府県で誘殺が確認されたが大きな被害は報告されていない。クビアカツヤカミキリは、これまで14都府県で発生が確認されており、一部の果樹で被害が報告されている。アリモドキゾウムシについては、23年3月から静岡県で緊急防除が実施されてきたが、24年11月27日に解除された。


懸念される登録縮小 代替剤の確保に尽力
協会事業について振り返る。シンポジウムについては、24年9月18日に「農業現場が求める病害虫防除の情報とは何か」というテーマで実施した。最近の情報通信技術(ICT)などの発達により病害虫防除に関する提供情報や伝達手段が多様化している状況を踏まえ、実際に農業現場にどのような情報が提供されているか、農業現場が必要としている情報とはどのようなものかなどについて検討した。25年1月16日には「農家にとってのIPM実践の意義を考える」というテーマで、改正植物防疫法に基づき推進されている総合防除(IPM)に関して、特に農家の視点からIPMを実践する意義・メリットなどについて検討した。今後とも時宜を得たテーマ選定を行い実施していく。
受託試験については、圃場(ほじょう)における農薬使用者暴露試験の24年度の実施件数は112試験となり、23年度の53試験から大幅に増加した。規制強化の影響が感じられる結果となった。このように再評価や使用時安全などの規制強化が進むにつれ、登録農薬の取り下げや登録内容の縮小が現出している。その対応として、当協会は基幹防除剤について代替農薬の探索・登録、使用時期確認などに向けて、関係機関と協力し特別連絡試験を実施している。今後とも、現場での防除にできるだけ支障が生じないよう必要な対応をとっていきたい。
農薬の新施用技術検討協議会については、①無人防除②慣行の農薬散布量の見直し③ドローン散布の3分野について検討結果を現場の指導に役立てられるよう順次情報提供していくこととしているが、23年は特にドローン散布について作物ごとの適用性に関する検証結果を公表した。引き続き情報発信を行っていく。
また、マイナー作物対策として、協会は農水省植物防疫課と協力し、農薬登録のための試験が円滑に実施できるよう「マイナー作物の登録試験の実務書」の改訂を検討している。
病害虫リスク高まる 防除の決め手は農薬
24年に食料・農業・農村基本法が改正され、その第41条に植物防疫の重要性が規定された。これは、国際物流の一層の活発化や異常気象により、病害虫のわが国への侵入リスクや国内での異常発生リスクが基本法制定時(25年前)よりも高まったことが背景といわれている。新たな病害虫の侵入や国内での急激なまん延の際には迅速な防除が不可欠であるが、その決め手となるのは農薬である。しかしながら、前述のように再評価や使用時安全評価により影響が生じつつある。農水省において農薬取締法の改正5年後の施行状況の検討が開始されたが、改正基本法第41条の主旨も踏まえて問題点を点検・検証し、適切な対応がとられることを期待したい。