日本農業新聞 編集局報道部 流通経済グループ
トマトは7、8月に夏野菜として需要最盛期を迎える。スーパーは、他の月と比べて大きい売り場を設ける。残暑を受け、近年は9月も旺盛な需要がある中、初秋までマンネリ化せずにトマトを楽しめる提案も出てきた。総菜大手は、サラダに欠かせない商材として年間を通して重宝する。夏場の高温で生育が不安定になる時期でもあるが、出荷量を確保できれば、有利販売が可能な市場環境になっている。
残暑を楽しむ新提案
マンネリ化懸念も
7~9月は例年、夏秋トマトの産地である、北海道や岐阜県、東北などが主産地となる時期。気温の上昇に伴い、サラダ商材などとして、消費も盛り上がりを見せる。
大手スーパーは、「7、8月は需要期のため、売り上げの構成比は野菜の中で最も高くなる」と話す。売り場の大きさは、春から夏にかけて最大化し、陳列場所も、客の目を引く場所に設けるなど販売強化に向けた工夫もするという。
加えて、近年は残暑が厳しくなる中で、9月の需要が以前よりも高くなっている。同スーパーは、「トマトのような生食用野菜は9月も7、8月と同様の売り場の規模を保つよう、近年は計画している」とし、夏秋トマト産地の出荷時期のほとんどが需要の高い時期と重なるようになってきている。
当たり前になりつつある〝暑い初秋〟ならではのトマトの食べ方提案も登場した。味の素は、残暑が厳しい9月、10月上旬の時期を快適に過ごすための料理を掲載するレシピ本を8月に発売。同書籍の代表レシピの一つである「野菜たっぷり冷やし中華」は、トマトなどの夏野菜と、同時期に旬を迎えるが、暑さで消費の減退が懸念されるカボチャやレンコンなどの秋野菜を組み合わせた提案となっている。

トマト需要が高まる夏のような気温の時期が延びる一方、懸念されるのが食卓での使われ方のマンネリ化。食べ方提案が増えていくことで、旺盛な消費環境が維持されることが期待される。
ロック・フィールドは、「トマトを使用した商品には根強い需要がある」とし、展開する総菜店・RF1で販売するトマトを使ったサラダは、年間を通して人気があるという。トマトを使ったサラダの人気の理由ついては、「トマトの甘みと酸味のバランスによって生まれるおいしさや、とろけるような果肉感、ソースとの相性の良さがある」と分析。トマトとそれ以外の素材が口の中で合わさることで、サラダとしてのおいしさが一層、高まるという。加えて、トマト以外に赤色の素材は少なく、サラダに彩りを加える商材としても重宝する。

暑さで入荷不安定に
品薄単価高で推移
7~9月の卸売市場での取引数量と価格を見ると、近年は品薄単価高で推移し、9月にかけて価格が上昇する傾向が顕著だ。
2025年の日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は、7月は平年(過去5年平均)比15%高の1kg359円、8月は同31%高の1kg441円、9月は同21%高の1kg580円を付けた。堅調な価格となった背景には、需要が高かったことに加えて、入荷量が不安定だったことも関係している。同時期の7卸取引量は平年比1割減の水準が続いた。

夏秋トマトの各産地では、今年も夏場の暑さによる生育不良が発生。7月には、高温で着色スピードが速くなったことによる小玉傾向や花落ち、裂果などによる出回り量の減少がみられた。8月には気温高による生育前進の反動で出荷量が減った産地もあった。
大手スーパーからは、「近年は暑さの影響で、北海道産を中心に9月の仕入れが以前よりも前倒しで不安定になっている」という声も上がる。9月のトマト需要は以前よりも高い。気候変動に対応した安定出荷が求められる。
