要警戒病害虫2025
厳しい暑さで各地多発

2025.12.04
日本農業新聞 編集局報道部 営農グループ

 近年、夏場の厳しい暑さに見舞われ、各地で病害虫の発生が相次いでいる。今年、都道府県が発表した発生予察情報では、大分県や熊本県が外来害虫のトマトキバガに関する注意報を発出。オオタバコガなどのチョウ目害虫でも注意報が出され、近年多発傾向が続いている。そこで、夏秋トマト栽培で警戒すべき病害虫の特徴や対策を国や県の情報を基に整理する。

トマトキバガ

 トマトキバガは、2021年に国内で初めて確認されて以降、急速に分布が拡大。現在は、全都道府県で発生が確認されている。葉の裏側などに卵を産み、ふ化後に茎葉に侵入する。侵入した部分は白や褐色に変色。果実も食害して、表面に穿孔(せんこう)痕が残ることもあり、腐敗の原因になる。成虫は夜行性で、日中は葉の間に隠れていることが多い。注意深く圃場(ほじょう)を観察し、早期発見に努める。

トマトキバガによる食害痕(いずれも熊本県病害虫防除所提供)
トマトキバガに食害された葉

 発生を確認したらすぐ、被害が出ている葉を摘葉するとともに、全ての苗に薬剤を散布する。食害された葉や果実は、土中に深く埋めたりビニール袋で密閉したりするなど、適切に処分する。散布する薬剤について、国内では登録農薬での感受性低下は確認されていないが、海外では一部農薬に対し、薬剤抵抗性の発達が報告されている。同じ系統の農薬の連続使用は避け、ローテーションでの散布が必要だ。

オオタバコガ

 オオタバコガも、全国的に多発している。今年は、主産地である愛知県や千葉県など、複数県が発生予察注意報を発出した。
 オオタバコガは夏から秋にかけて高温・少雨が続くと多発生する傾向がある。近年は、夏以降も高温傾向が続いているため、発生が助長されているとみられる。孵化(ふか)した幼虫は、生長点近くの葉やつぼみに潜りこみ、食害する。その後、肥大した果実の内部にも侵入。同じ部分を連続して食害しないため、幼虫の密度が低くても被害が大きくなる。幼虫が作物に潜り込んだり、虫の成育が進んだりすると、薬剤の効果が低下するため、早期に発見し、若齢幼虫のうちの防除を徹底する。一部薬剤では薬剤抵抗性の発達も報告され、効果的な防除が厳しい状況だ。防蛾灯による対策で、手応えを得ている農家もいる。

オオタバコガの幼虫
果実を食害するオオタバコガ

黄化葉巻病

 トマト黄化葉巻病は、トマト黄化葉巻ウイルスの感染により引き起こされるウイルス性の伝染病。葉が徐々に黄化し、巻き上がる。

黄化葉巻病にかかり葉が巻いている被害葉

 感染してから発病までの期間が長く、外見に異常がなくても、ウイルスを保持している可能性があるため、感染が疑わしい株は根ごと抜き取る。感染したトマト株が発病するまでの時間は、温度や株の大きさによって異なる。同病の感染を簡単に確認できるよう、簡易キットも市販されている。
 発病した株を治療する方法はなく、ウイルスの媒介昆虫であるタバココナジラミを侵入させないことが重要。夏秋作では、ハウス内にタバココナジラミを入れないため、換気部などに目合い0.4mm以下の防虫ネットを張り、侵入を防ぐ。定植時は、農薬のかん注処理や粒剤を施用して、タバココナジラミの寄生を防ぐ。
 タバココナジラミはハウス内で越冬するため、栽培終了後は、トマトの株元を切断した上で、ハウスの温度を高め、死滅させる。作物残さは、土中に埋めるか焼却する。
 各地で害虫のタバココナジラミを捕食するタバコカスミカメ(カスミカメ)を活用する事例も増えている。

青枯病

 高温下で発生しやすい青枯病にも注意が必要だ。気温25度以上の高温下で多発し、一度感染すると、回復は難しい。発病初期は、下位の葉が日中に萎凋(いちょう)し、曇天時や夜間に回復する。しばらくすると、回復しなくなり、株全体が枯死する。
 被害株の株元付近の茎を切ると、中から乳白色の粘液が出てくるのが特徴。発病すると、病源となる細菌が土壌中に2、3年以上生存するため、予防を徹底することが重要だ。
 感染を防ぐためには、青枯病に抵抗性を持つ台木を利用した接ぎ木や抵抗性品種の利用が推奨される。今年、青枯病に効く生物農薬も発売された。