燃料価格が年々上昇
経営への影響最小限に

2025.06.12
日本農業新聞 編集局報道部 営農グループ

 トマトなど施設園芸品目の加温に使う、燃料の価格が徐々に上がってきている。3月の価格はここ5年で最高となった。価格上昇分を補塡(ほてん)する国事業の活用、ヒートポンプや保温資材の導入などで、経営への影響を最小限にとどめることが重要だ。

保温用の展張資材を設置したハウス

5年で1.5倍に上昇
燃料高騰・省エネ対策を

 さまざまな資材価格をまとめた農水省の農業物価統計調査によると、A重油の3月の価格は1L当たり122.6円。5年前に比べて1.5倍ほどに上昇した。原料となる原油価格上昇によるもので、レギュラーガソリン、軽油・灯油いずれも上がっている。

 施設園芸農家の燃料高騰時の支えとなるのが、国の「施設園芸セーフティネット構築事業」だ。対象はA重油、灯油、LPガス、液化天然ガス(LNG)。国と農家が1対1で資金を積み立て、燃料価格が基準を上回った時に発動し、購入数量の70%が補塡される。価格急騰時には特例措置として100%に引き上げられる。
 7月31日まで、次の事業年度(2025年10月~26年6月)の加入申し込みを受け付けている。前事業年度(23年10月~24年6月)は、加入者が過去最高の2万2900戸となった。
 加入には「3年間で燃料使用量を15%以上削減する計画」を作る必要がある。省エネにつながる点検項目の確認に加えて、ヒートポンプなど資機材の導入も有効だ。同省が公開している「施設園芸省エネルギー生産管理マニュアル」はそれらの導入のポイントをまとめている。例えばヒートポンプと燃焼式加温機を併用する場合は、エネルギー効率が良いヒートポンプを優先的に稼働させ、それでも能力が足りなければ燃焼式加温機が動くよう温度を設定する。目安は、ヒートポンプの方の稼働開始温度を2、3度高くする。

ハウスに取り付けられたヒートポンプ

 内張りカーテンや断熱資材の展張も効果が高い。同マニュアルによると、内張りカーテン(農POフィルム)を1層設置すると、ハウスから逃げる熱の量を30%減らせる。2層だと45%減る。これらを導入する前提として、今のハウスに破れや隙間がないか確認し、補修や目張りを施すよう促している。

空気だけ、燃料いらず?
未来のCO2施用技術

 トマトをはじめ果菜類の生育を促すためには二酸化炭素(CO2)を施用するが、主流の燃焼式施用機を使う場合はこちらも燃料高騰が直撃する。まだ実証段階だが、空気中にわずかに含まれるCO2を濃縮して施用する方法もあり、農業での実用化が待たれる。
 JA全農は昨年12月、営農・技術センターに導入した、特殊な膜を介してCO2を濃縮する装置を公開した。九州大学発のベンチャー企業が開発した装置で、空気中のCO2濃度(約400ppm)を2000~3000ppmまで高められるという。養液栽培の大玉トマトに施用し、効果を確かめる。
 全農ではまた、他産業と連携し、セメント工場の排ガスから回収したCO2の利用にも取り組んでいる。大気中に放出されていたCO2を、施設園芸で使う燃料由来のCO2と代替できれば、温室効果ガスの削減と農業生産性の向上を両立できる。持続可能な施設園芸の実現へ期待がかかる。

空気中から回収したCO2を施用するJA全農のハウス。塩ビ管から群落内に施用している