日本農業新聞 編集局 報道部
今期の冬春トマトは、相場の浮き沈みが激しかった。特に昨夏の猛暑が尾を引いて品薄高で始まり、反動で年末は低迷した。卸売会社は、供給過多で値崩れした結果を踏まえ、年末商戦に入る前に入荷の山が来ることを、需給バランス安定の鍵に挙げる。
10月は平年の約2倍高 高値疲れで売り場縮小
出回りが始まった10月は、定植期の高温が影響して入荷が伸び悩んだ。夏秋作の品薄も重なり需給は逼迫(ひっぱく)。中旬には、日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)が1㎏916円と、平年の2倍近くまで急騰した。
品薄解消に向かった11月以降は、高値疲れで売り場が縮小。一転して軟調となり、年末は苦戦が色濃くなった。例年だと12月上旬に来る年内のピークが、中旬以降にずれ込んだため。東京の青果卸は「スーパーの売り場が広がりづらい年末に入荷が集中し、供給過多で年始まで滞留在庫を抱えた」と振り返る。
対策が困難なレベルの猛暑、品種転換に伴い変化する供給ペースの調整。前出の卸は「対応は簡単ではない」と産地の事情に理解を示しつつ、「年末に向けて入荷量を徐々に落ち着かせ、相場を底上げできるのが理想だ」(同)と話す。
作柄による相場変動はあるものの、国産の青果物は、上昇する生産コストに販売価格がなかなか反映されない。そんな中で生産者の所得を確保するため、規格の簡素化を試みる産地が出てきた。
東日本のJAは今期、ミニトマトの一部ブランドを対象に、五つ設けていた階級を三つに減らした。生産者は個々で階級別に選果しており、「繁忙期は夜間の作業で大変。時給で支払う人件費も増える」(管内の生産者)。簡素化により、労力と費用の負担を減らす狙いだ。
市場側は、産地の試みに理解を示しつつ、「レギュラー品にまで適用するのは難しい」(青果卸)との声が聞かれる。「品質やサイズで区別していたものを一緒にすると、買参人に足元を見られて下の価格がつくかもしれない」(同)ためだ。
細かな規格設定は、各産地が差別化を目指した工夫の結果でもある。工夫を価格に反映するべく、市場でも評価の指標となってきた。一方、「店頭に並ぶ200gパックには、産地で細かく選別したミニトマトが一緒くたに入っている」(主産地のJA)という指摘も、見逃せない。
9割が無選別に前向き 野菜の量り売り実証も
流通研究所は昨年、スーパーを対象に規格を簡素化した青果物に対する調査を実施した(341のスーパーにアンケート発送、116件が回答)。無選別・サイズ混合規格の青果物の取り扱いについて、57%が「現時点であり」、33%が「将来的にあり」と回答。9割が取り扱いに前向きな意向を示した。
同研究所は昨年、直営の青果店で野菜の量り売り実証にも取り組んだ。色別のミニトマト、品種別のジャガイモなど、7品目を用意。「買う量を自ら調節できるのは、余らず使い切りたいニーズに合う」と分析する。
産地の負担や消費者ニーズを捉え、実需側が規格の簡素化に理解を示す可能性もある。必要以上に細かい規格となっていないか、産地、市場、実需者を交え検証してみる余地はあるのではないか。