主な夏秋作型向け
トマト品種の特性

2023.11.30

夏秋取りトマトの品種選びと最新動向

農研機構野菜花き研究部門 研究推進部研究推進室長 松永 啓

 トマトを安定栽培させる重要な要素として、栽培地の環境や栽培方法に最も適した品種を選ぶことがあげられる。ここでは、夏秋トマトにおける品種選びの参考として夏秋取りトマト品種の特性(農研機構・野菜花き研究部門監修)を紹介する。

大玉トマト・ミディ(中玉)トマト

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病害抵抗性は、◯=抵抗性あり、△=中程度の抵抗性あり(耐病性含む)。品種選定や各品種の抵抗性の強弱は種苗会社への聞き取りや、種苗会社のカタログ、ホームページなどを参考にし、それぞれ農研機構野菜花き研究部門が監修した。※①高温期の「果実肥大性」「着果性」「耐裂果性」「耐尻腐果」の4項目はメーカーの自己申告に基づき、◎=極めて優れている、◯=とても優れている、△=やや優れている、記載なし=優れていない・不明、とした ※②黄化葉巻病抵抗性遺伝子型は、種苗会社が非公表の場合は△=中程度の抵抗性あり(耐病性含む)、とした ※③葉かび病は、◯=抵抗性遺伝子がCf-9、または同等レベルの強い抵抗性、△=◯よりやや弱い中程度抵抗性とした※④品種の特徴は、種苗会社によるコメント ※⑤国内育成品種は育成した種苗会社を、海外育成品種は国内の販売店などを記載した

ミニトマト

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病害抵抗性は、◯=抵抗性あり、△=中程度の抵抗性あり(耐病性含む)。品種選定や各品種の抵抗性の強弱は種苗会社への聞き取りや、種苗会社のカタログ、ホームページなどを参考にし、それぞれ農研機構野菜花き研究部門が監修した。※①高温期の「果実肥大性」「着果性」「耐裂果性」「耐尻腐果」の4項目はメーカーの自己申告に基づき、◎=極めて優れている、◯=とても優れている、△=やや優れている、記載なし=優れていない・不明、とした ※②黄化葉巻病抵抗性遺伝子型は、種苗会社が非公表の場合は△=中程度の抵抗性あり(耐病性含む)、とした ※③葉かび病は、◯=抵抗性遺伝子がCf-9、または同等レベルの強い抵抗性、△=◯よりやや弱い中程度抵抗性とした※④品種の特徴は、種苗会社によるコメント ※⑤国内育成品種は育成した種苗会社を、海外育成品種は国内の販売店などを記載した

台木用トマト

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注)1.主な品種について種苗会社のカタログ、ホームページなどを参考に病害抵抗性を示し、それぞれ種苗会社が確認、農研機構野菜花き研究部門が監修した 2.青枯病は種苗会社のカタログで抵抗性強度が5―7の品種を〇、8―10の品種を◎とし、抵抗性強度の品種間差が明記されていない品種は□、とした 3.褐色根腐病は、タキイ種苗およびサカタのタネの品種は抵抗性強度が3―4の品種を△とし、5―6の品種を〇、7―9の品種を◎とした

夏秋取りトマトの品種選びのポイント

生理障害(裂果)

“冬春向き”夏季栽培は注意

 夏の高温時に発生しやすい生理障害として裂果がある。高温期には、根からの吸水が活発になり、果実肥大も旺盛になるが、果実の肥大速度に果皮の形成速度が追い付かない場合に裂果が起こりやすい。裂果の発生程度には、品種間差異が見られる。一般的に、冬春栽培には、低温・寡日照下でも十分に果実肥大する品種が適するが、このような品種を夏季に栽培すると、裂果しやすい。種苗メーカー各社は、品種を冬春栽培向き、夏秋栽培向きのように分類していることが多い。なお、夏秋向き品種でも裂果発生程度に品種間差異が見られるので、各品種のコメント欄に注意して品種を選びたい。

生理障害(着果不良)

高温期の着果性に注目

 高温時の栽培では、不着果が生じやすい。原因はいくつか考えられるが、高温による花粉稔性(ねんせい)の低下も大きな要因である。トマトの花粉は25度を超えると稔性が低下しやすくなり、30度以上になると極端に低下する。ただ、25から30度の高温域での着果性には品種間差異が見られ、夏秋栽培向き品種は、高温期に着果性の良い品種も多い。着果性も各社の品種特性のコメントに記載されていることが多く、注意して品種を選びたい。

青枯病対策

抵抗性台木の改良進む

 青枯病は、高温時に発生しやすい土壌病害で、夏秋期の栽培では最も被害の大きな病害の一つである。対策として、還元消毒や太陽熱消毒などの土壌消毒は一定の効果が認められるが、抵抗性台木用品種への接ぎ木が最も有効と言われている。これまで、トマトの台木用品種には青枯病に有効な品種が少ないといわれていたが、近年、かなり強い抵抗性を示す品種も育成されている。青枯病の被害に悩んでいる産地では、適切な土壌消毒を施した上、青枯病抵抗性を示す台木用品種を選びたい。種苗メーカー各社は、台木用品種の青枯病抵抗性強度をランク付けしていることが多いので、その情報も参考にしたい。