ネギには軟白部分を主に食する根深ネギと九条ネギやワケギ、ワケネギなどの葉ネギに大きく分類される。発生する病害虫に大差はないが、要防除水準(これ以上発生すると対策が必要となる水準)は地上部の葉全体が商品となる葉ネギが圧倒的に低い。いずれにおいても、病害の多発が予想される場合は、薬剤による防除が有効である。害虫については、ネギアザミウマやネギハモグリバエのほか、ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウなどのチョウ目害虫が全国的に発生している。薬剤による防除に加え、リビングマルチや物理的防除資材の活用などの防除法を組み合わせるなどして、効率的な防除に努めたい。
病害 適期防除で多発防ぐ
地上部病害は、細菌や糸状菌(カビ)によるものが多い。発生しやすい時期や条件は少しずつ異なるが、斑点細菌病や葉枯病、べと病、黒斑病、さび病(写真1)、黄斑病(同)など、多くは比較的冷涼な春や秋の発生が多い。いずれの病害も降雨が続くと発生しやすくなり、露地栽培では、その環境を変えることは難しい。

こうした状況下、耕種的な防除方法が、病害対策の一翼を担う。輪作や排水対策、土壌改良資材や堆肥の投入により適正なpHを維持しつつ、有用微生物などの施用は生育を促進させ、ネギが本来持っている抵抗力を高める効果があるため、ぜひとも活用したい。また、ネギの特性として高温には強くないため、盛夏の土寄せは行わず過度な断根も避けるのが賢明である。
このような耕種的防除を行った上で、やはり薬剤による防除が基本となる。多発させると1回の薬剤防除ではその進展を食い止めることが難しくなるため、防除適期に注意する。
またネギアザミウマなどによる食害は、これら病害の発生を助長するため、虫害対策も防除において重要となる。経費や労力の削減、環境への影響に配慮し、薬剤散布と耕種的防除を組み合わせた効率的な病害対策を心がけたい。
害虫 化学農薬軸に総合防除を
春先から加害が増えるのはネギアザミウマ(写真2)で、定植後間もなく寄生が始まり、無防除の場合、1カ月もすると幼苗であっても1株当たり数十頭となり、初期生育に影響を及ぼす。散布剤は、卓効を示す薬剤であってもその残効は2週間程度であるため、幼苗期には3~4週間の残効が期待できる灌注(かんちゅう)処理剤や粒剤を定植時に用いたい。

夏以降はハスモンヨトウ(写真3)やシロイチモジヨトウといったチョウ目害虫が発生する。両種とも若齢幼虫は集団で表層を加害する。中老齢になると分散するが、食欲が旺盛であるため葉が部分的に消失してしまう。

ネギハモグリバエ(写真4)も重要害虫の1種であり、近年は幼虫の食害痕の面積が極端に大きくなるB系統が各地で発生しているため、他の害虫との同時防除に努めたい。

いずれの害虫も、一部地域で薬剤抵抗性の発達が見られる。抵抗性の発達を抑えるために、同一系統の薬剤の連用は避け、RACコードの異なる薬剤のローテーション散布を心がける。特にチョウ目害虫に対してはBT剤も活用したい。同一系統の薬剤を連用すると、さらなる抵抗性個体群の拡大、防除経費や労力の増大、環境負荷にもつながることから、リビングマルチや耕種的防除も取り入れたい。
リビングマルチ栽培(写真5)では、ネギの畝間に大麦などを作付けすることによって、天敵(写真6)のすみかが確保され、自然に害虫密度が抑制される。その他の利点として、地温の上昇抑制、過乾燥や湿害の軽減、雑草抑制、有機物の投与効果なども期待できる。

5月上旬ごろに畝間にリビングマルチ用大麦を播種(はしゅ)すると、8月には出穂することなく枯れる

(右)クサカゲロウの卵(中)コマユバチの1種 (左)ヒメコバチの1種
物理的防除としては、比較的小面積のワケネギなどの葉ネギ栽培では、光反射シートの敷設により、ネギアザミウマなどの害虫密度を抑制できる。加えて、夏季の地温上昇が抑制されることから、通常であれば生育が停滞する時期においても旺盛となり、出荷時期が早まることが分かっている。
また、赤色防虫ネットの展張や光反射テープ(写真7)などの設置はネギアザミウマの密度を抑制できることが明らかとなっているため、地床育苗時などにはぜひとも取り入れたい技術である。

以上のように、ネギの栽培に限ったことではないが、病害虫の防除対策は化学農薬を基本に、自身の栽培で取り入れられる他の防除方法を組み合わせて、総合的に取り組んでいきたい。
埼玉県農業技術研究センター 病害虫研究担当 宇賀博之 |