茨城県・JA水戸 水戸地区ねぎ生産部会
JA水戸水戸地区ねぎ生産部会柔甘(やわらか)ねぎ部が生産しているオリジナルブランド「柔甘ねぎ」は、柔らかく甘味があり緑の葉まで食べられるハウス栽培の軟白ネギだ。一般的なネギに比べ1.3~1.6倍軟白部分が長く、曲がりが少ない。土壌検査をはじめ、細かくマニュアル化された栽培方法で品質を保つ。2018年には、農水省の地理的表示(GI)保護制度に登録。現在16人(来年は18人)の生産者で栽培面積3.4ha、生産量は年間150t。11月から7月末まで出荷する。ブランドをけん引するJA水戸の園部優組合長と、横倉睦郎ねぎ生産部会長に話を聞いた。

有利性と将来性着目し導入
1995年に普及センターやJA職員と北海道南幌町へ、軟白ネギの視察に行った。現地では生産者や市場、農業試験場から、軟白ネギの特性や経済性、市場評価を学んだ。特に苗を本州から取り寄せて作付けしている点や、一般のネギとは異なる有利性や将来性に着目し、導入を決意した。
試作開始に当たっては、種苗会社や試験場から情報を集め、普及センターの協力のもと、栽培技術の習得に努めた。翌96年の初年度はさまざまな障害や抽苔(ちゅうだい)による失敗も経験したが、再生力の高い品種に助けられ、出荷にこぎつけた。
市場関係者を招き有名他産地のネギと目隠しの食味テストをしたところ、「水戸のネギなんて」と言っていたバイヤーが一番高い評価を付けたのが「柔甘ねぎ」だった。このような取り組みが奏功し、高単価で取り引きされるようになり、生産者が増えた。

ネギのおいしさ さらに追求
98年に「柔甘ねぎ」とネーミング。他産地との差別化のため、除草剤や一部の農薬を使わず、草取りも手作業で行った。農薬は独自の厳しい基準を設け、肥料も有機主体とし、硝酸態窒素が残らないよう施肥設計にこだわった。こうした努力を重ね、おいしさや安全性を追求しながら、地道にブランド化を進めてきた。
ネギのおいしさを追求するため、各専門機関を訪ねて研究を重ねた。おいしさについて、果物のように明確な基準がない中、ミネラルが豊富で硝酸態窒素が少ない圃場(ほじょう)で育てたネギがおいしいと結論づけ、土壌検診や糖度、硝酸態窒素の測定を徹底した。
また、柔らかさにもこだわり、18通りの作型を検証。最適な収穫時期を見極めてマニュアル化し、科学的根拠に基づく品質管理を行っている。
新しい肥料や品種などを導入する際は、3人の生産者が3年間試験を行い、9通りのデータを収集。その結果、50%以上で良好な成果が出た場合に、全員で採用するのが方針だ。
経験者がマンツーマンで指導
ねぎ生産部会には現在43人のメンバーが在籍しており、そのうち16人が「柔甘ねぎ」を栽培している。露地ネギのみや、両方を作っているメンバーもいる。
「柔甘ねぎ」の栽培を始めるには、まず数年間露地ネギの栽培経験を積んでもらう。ハウス栽培は初期投資が高いため、慎重にしている。「柔甘ねぎ」を始める際には、必ず役員や経験者が指導者として付き、最低1年間はマンツーマンでサポートする。新規参入者は自ら積極的に先輩のもとで学ぶことが求められ、要所要所で指導を受けながら技術を身に付けていく。このように、しっかりとした支援体制のもとで取り組む仕組みになっている。
GAPとGI認証で価値向上
農業生産工程管理(GAP)は2009年6月から導入し、JAグループGAPの21項目を実践している。農薬の保管方法も改善され、生産者の管理意識が大きく向上した。年2回の現地監査と年1回の内部監査を実施し、良かった点や課題を全員で共有している。また、土壌診断や施肥設計、農薬・肥料の記録も徹底し、出荷前に検体を提出して糖度や硝酸態窒素の値を確認し、品質管理を徹底している。

13年に商標登録し、さらに18年に「水戸の柔甘ねぎ」でGI保護制度も取得した。GI取得後は各種イベントや展示会に積極的に参加し、他産地との交流や情報収集も行っている。GIを持つことで高級店への販路拡大や価格の安定化といったメリットがあり、茨城県の「奥久慈しゃも」とコラボレーションしたネギマ料理や、有名シェフによるレシピを開発しユーチューブで発信するなど、ブランド価値の向上にもつながっている。
次年度新たに2人の「柔甘ねぎ」の生産者が加わる。これからも柔軟な体制で維持・発展できる仕組みづくりに努めていく考えだ。
