秋冬作型向け
品種選びと最新動向

2025.01.15
農研機構 野菜花き研究部門 野菜花き品種育成研究領域 露地野菜花き育種グループ 主任研究員 藤戸 聡史

 秋冬取りネギは、栽培期間の夏季の高温や乾燥などの影響を受けやすく、それぞれの地域に合った品種選びや資材の選択の重要度が増している。本特集では、農研機構・野菜花き研究部門の監修で秋冬ネギの品種選びのポイントや品種特性を紹介する。

高温や豪雨の影響大

 地球温暖化により、日本でも毎年のように夏季の高温や集中豪雨などの異常気象が全国各地で発生している。ネギの原産地は乾燥地帯の中央アジア周辺といわれているが、豪雨での畑の冠水による湿害はもちろんのこと、夏季の高温による著しい乾燥によってもネギの生育には悪影響が及ぶ。
 2023年度には、全国的に夏季の異常な高温と少雨による極度の乾燥に見舞われた。多くの地域で著しい生育停滞や枯死株が発生し、収穫期に十分な太りや重量が得られない株や欠株が見られた。
 一方で、24年度は夏季の異常な高温と集中豪雨の多発により土壌が過湿状態となり、生理障害や腐敗病などの病害の発生による被害が出る地域が見られた。
 このように近年は気象条件が毎年のように異なることから、気象条件を予測した対応は難しいのが実情だ。
 ただ、一般的な秋冬取り品種の重要な特性として、耐暑性や生育停滞期からの回復の早さが挙げられる。

平均単価は高く推移

 農水省の野菜生産出荷統計によると、23年度の秋冬取りネギ収穫量の都道府県別上位3県は、前年度と同様に埼玉県、千葉県、茨城県だった。3県が全国の秋冬取り収穫量(25万4700t)の3分の1を占めている。
 東京都中央卸売市場の23年度のネギ入荷実績によると、春夏取り(4~9月)の平均価格は1kg当たり397円で、秋冬取り(10月~翌3月)は同393円だった。
 例年、端境期である春夏取りの方が単価は高い傾向にあるが、23年度は、夏季の高温や乾燥による不作に伴って9~11月の単価が高騰。秋冬取りの平均価格が例年よりも高く推移したため、秋冬取りと春夏取りの平均価格の差がなくなったと考えられる。
 24年11月までの公開データによると、24年度は、前年度ほどではないが例年よりも9~11月の単価は高い水準で推移している。
 これも、夏季の高温と湿害による影響が、入荷量の減少と単価の高騰に表れていると考えられる。

複数品種の試作を

 比較的収量が安定している秋冬取り作型においても、夏季の異常気象による影響を大きく受けることが示された。
 夏季の高温や乾燥による被害を可能な限り減らすことが重要だ。そのためには、それぞれの地域に適した品種を選ぶための試作の実施や、栽培地域や環境に合った資材の利用が今後ますます重要になってくる。
 秋冬取りと一口に言っても、収穫期間は長期間にわたる。そのため、品種を選ぶ際には、収穫したい時期に合わせて重視したい特性を持つ品種をそれぞれ候補として取り入れ、複数の品種で試作に取り組むのが良さそうだ。

農研機構 藤戸氏監修 ネギ品種リスト一覧

※特性の評価については各社から提供いただいた評価値を基に各社のカタログ、ホームページを参考にし、それぞれ農研機構 野菜花き研究部門が監修した。