千葉県・JAちばみどり そうさ園芸部
千葉県東部の横芝光町などを管内とするJAちばみどりは、徹底した品質管理と検品の厳しさで高品質ネギを出荷し、ブランド「ひかりねぎ」を確立した。千葉県は秋冬ネギで出荷量2万5100t(2023年)を誇る全国2位のネギ産地。JAちばみどりは県内トップクラスの品質で県産ネギの販売をリードする。

集出荷を一元化 厳しい検査体制
「ひかりねぎ」は、生産者で組織するJAちばみどりそうさ園芸部が手間を惜しまず栽培するブランドネギで、年間11億円以上を売り上げる基幹作物の一つだ。透き通るほど白くて長い軟白部と、緑色の境目がはっきりしていて、全体に光沢があるのが特徴だ。冬は鍋に入れると柔らかくて甘く、夏は薬味で食べるとシャキシャキとみずみずしい。
同部のネギ生産者は約220人。秋冬を中心に周年出荷し、2023年度の販売実績は、秋冬ネギが最も高い約5億8200万円。次いで近年増加している夏ネギが約4億1600万円、春ネギが約1億3000万円に上る。秋冬ネギと春ネギの栽培面積は、品種「龍ひかり2号」などを中心に約73ha、夏ネギは約35ha、年間出荷量は約64万ケース(1ケース5kg)。約8割を京浜市場、約2割を東北地方の市場へ出荷する。
好調な販売を支えるのが安定した品質の高さだ。軟白部を長く伸ばすため、管理機を使って5、6回土寄せをする。もみ殻を施用している生産者もおり、手間を惜しまず栽培している。
管内は3市1町にまたがるが、集出荷場を横芝光町の「サンフレッシュそうさ」に一元化している。JAが専任検査員5人を雇用し、集荷時には常に抽出検査を実施しており、検査後に出荷品を専用のパレットに降ろす。同園芸部検査部会の役員8人が専任検査員と日々情報交換しながら、定期的に立会検査を行っている。生産者も出荷規格を厳守する重要性を理解しており、どの箱を選んでも品質が均一なのが強みだ。
夏越し性は死活問題 各自に合う品種選び
周年栽培で出荷期間が長く、海に面した場所から丘陵地帯まで管内の幅広い地域特性に対応するため、毎年時期を変えて品種検討会を開く。昨年は11月に開き、8社の種苗会社が参加。管内で栽培した各社一押しの慣行5品種と、試作12品種を検討した。
JAと関係機関が正品率や残存率、太さなどを審査して部員に報告し、各品種で意見交換する。部員は毎年約20品種程度の特性を学び、自らの作型や圃場(ほじょう)に合った品種を選ぶことができる。
24年4月に部長に就任した江波戸寿穂さん(70)は、「地域や作型によって圃場や品種を見極めることが重要だ」と話す。ネギ栽培が盛んな海岸部一帯は砂壌土で水はけが良い一方、地形的に雨が多いと地下水位が上昇し、根腐れを起こしやすい。火山灰土や粘質土からなる内陸部の丘陵地帯は季節風の影響を受けやすく、冬季は海岸部と比べて気温が1、2度低いという。
江波戸部長は品種検討会の情報や自らの経験を基に品種を選び、約3haで周年栽培しながら、発酵鶏ふんを活用するなどで連作障害を防ぐ。「秋冬ネギの定植後、夏の暑さを乗り越えられないと死活問題になる。耐暑性が高く、根腐れに強い品種が求められている」と話す。
16年からは、近隣のJAと連携し、初夏取りネギを「プレミアム夏ねぎ」として販売。端境期で市場に物が少ない4月下旬から5月に出荷することで、生産者の所得向上を実現した。
夏季の高温が落ち着いた11、12月頃に定植後、花芽分化を回避するため2条トンネルで栽培。生育期間が短いため、ネギ坊主の発生も無く柔らかくてみずみずしいと、市場から高い評価を得ている。通常の夏ネギよりも1ケース当たり1000円ほど高く売れ、手間と資材費は掛かるが、価格の高さから栽培に取り組む生産者が増えている。
江波戸部長は「物流2024年問題への対策や新規就農者の育成などにも積極的に取り組み、生産量を維持、拡大していきたい」と抱負を語る。
[インタビュー]生産拡大へ 全力支援
JAちばみどり・営農センターそうさ 木下 真一センター長

品質の高さで市場からの信頼を獲得するJAちばみどりのブランドネギ「ひかりねぎ」。
同JA営農センターそうさの木下真一センター長に、品質維持のポイントや今後の展望を聞いた。
一元集出荷場のメリットを教えてください。
集出荷場に持ち込まれる出荷品は全て専任検査員が抽出検査を行っている。そうさ園芸部の検査部会役員も定期的に立会検査を行っており、問題があれば部会として対応する。
品質が一定水準以上に維持され、市場からの高評価につながった。
さらに、真空予冷設備を使うと、約30分で芯まで冷やすことができ、保冷効果によって市場から先への鮮度も保つことができる。特に夏場は大きな効果があり、取引先から喜ばれている。

病害虫防除で工夫している点はありますか。
そうさ園芸部の指導部会と協力してフェロモントラップを圃場(ほじょう)に設置。害虫を早期発見する仕組みを整え、年4回共同防除を実施している。2023年から増えているのはシロイチモジヨトウの食害。葉の中に入るため農薬が効きづらく、フェロモントラップで発生を確認した場合、早めの防除を呼びかけている。
物流2024年問題の取り組みについて教えてください。
「T11型(1100mm×1100mm)パレット」に合わせて出荷用段ボールを見直し、昨年10月にサイズを変更した。その結果、パレットへの積み込みがしやすくなった。
集荷は午前中に限定し、当日午後には各市場へ出荷する。休市日前日はトラックによる出荷作業は休み、集荷のみを行って予冷庫で保管。翌日に出荷している。


産地の展望を聞かせてください。
生産者が高齢化する中、新規就農者を対象にした講習会を年5回開催している。毎年10人ほどが参加し、3分の1ほどがJAへの出荷につながっている。後継者の育成は、ブランド産地を守っていくために欠かせない。
部会の若手生産者を中心に組織する「ひかりねぎ研究会」とも連携し、生産量の現状維持ではなく、増やしていくためのサポートに全力を尽くしたい。