秋冬作型向け
品種選びと最新動向

2024.01.16
農研機構 野菜花き研究部門 野菜花き品種育成研究領域 露地野菜花き育種グループ 研究員 藤戸 聡史

 年内に収穫する秋冬ネギは、夏の高温や乾燥の影響を受けやすく、栽培適地に合った品種選びが重要だ。本特集では、農研機構・野菜花き研究部門による監修で秋冬ネギの品種選びのポイントや品種特性を紹介する。

秋冬取りが主力の根深ネギ

 根深ネギは秋~冬に旬を迎えるため、春夏取り作型よりも秋冬取り作型が主力となる。一般的な秋冬取り栽培は、3〜5月に播種(はしゅ)、初夏に定植し、11〜翌2月に収穫する作型である。品種や栽培適地によっては、11月に播種して翌8月から収穫できる作型や、1月に播種して7月中旬から収穫できる作型、3月まで収穫可能な作型などもある。
 農水省の野菜生産出荷統計によると、2022年度の秋冬取りネギの収穫量は27万6400㌧。都道府県別トップ3は埼玉県、千葉県、茨城県で全国収穫量のおよそ3分の1を占めた。東京都中央卸売市場と大阪中央卸売市場への月別入荷実績によると、これら3県に次いで群馬県や長野県、北海道・東北地域からの出荷量も多い。西日本では大分県や鳥取県からの出荷量も多い。
 東京都中央卸売市場の22年ネギ入荷実績によると、端境期で単価の高い春夏取りネギ(4~9月の平均価格1㌔当たり384円)と比較すると秋冬取りネギ(10~翌3月の同298円)の価格は低いが、出荷量は春夏取りネギのおよそ1.4倍と、ここ数年は同様の傾向を示している。

夏季の管理は影響考慮して

 年内の秋冬取りネギの収穫は、夏季の高温や乾燥による影響を大きく受けるため、収穫量や市場価格の変動が大きくなる傾向がある。近年の秋冬取りネギでは夏越し性の高さをうたっているF1品種が多く、作型や栽培適地によって適した品種を選ぶことができる。また、秋冬取りネギの生育時期である夏秋の台風による葉折れや葉鞘(ようしょう)の曲がりは、収穫時の作業性や商品価値の減少に直結することから、耐倒伏性も重要な形質となり、風の影響を受けにくいコンパクトな草姿の品種も育成されている。
 この他、栽培の長い秋冬取り作型は、ゲリラ豪雨などの異常気象に対応できるような形質を持った品種を選ぶことに加え、適切な病害虫防除や栽培管理を行うことが重要である。
 品種リストに示した作型や特性を参考に品種導入を進めて、秋冬取りネギの需要に対応した安定生産が望まれる。

農研機構 藤戸氏監修 ネギ品種リスト一覧

特性の評価については各社から提供いただいた評価値をもとに各社のカタログ、ホームページを参考にし、それぞれ農研機構 野菜花き研究部門が監修した。※収穫期は暑さがないので青果物を収穫するときの耐暑性はどれも同じ。