冬春取りトマト特集では、全国主要産地である26のJA生産部会にアンケートを実施した。特設サイトではアンケートの詳細を公開し、産地の課題を紹介する。
困っている病害虫・生理障害で最も多かったのが「コナジラミ類」(23部会)。次いで「裂果」(21部会)、「黄化葉巻病」(17部会)、「灰色かび病」(12部会)、「青枯病」(11部会)と続いた。
23部会が害虫「コナジラミ類」に苦慮
害虫では「コナジラミ類」(23部会)に次いで「トマトサビダニ」(5部会)、「アザミウマ類」(3部会)と続いた=グラフ1参照。
アンケートに答えたほとんどの部会が「コナジラミ類」に悩まされていた。東海では7部会全てが選んだ。「コナジラミ類」は多くの野菜や花き類に被害を及ぼす難防除害虫。吸汁などによる直接的な加害だけでなく、すす病などの発生原因となる。特にタバココナジラミはトマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)を媒介し、産地に大きな被害をもたらすこともある。
農水省は5月15日に発表した病害虫発生予報で南関東、東海、四国での発生が平年より多く、九州でもやや多いと注意を呼び掛けている。
対策としては、5部会がハウス開口部に防虫ネットを設置し、気門封鎖剤や殺虫剤「ベリマークSC」、粘着板の設置など防除に力を入れる部会が多かった。
「出入口での靴の消毒や、12、3月の一斉防除の実施」(東海地方)、「TY品種の導入やハウス環境の改善」(九州地方)を挙げる部会もあった。
黄化葉巻病 抵抗性品種を導入
病害で最も回答の多かった「黄化葉巻病」(17部会)=グラフ2参照=は、世界的なトマトの重大病害でTYLCVが発生要因となる。近年ではより病原性の強いウイルスの国内への侵入が確認され、被害拡大が懸念されている。東海は7部会中6部会、九州は6部会中4部会が選んだ。
対策は、TYLCVを媒介するタバココナジラミの防除が基本となる。防虫ネットの設置など物理的防除と薬剤ローテーションの実施、さらに抵抗性遺伝子を持つTY品種の導入が挙がった。
「葉かび病・すすかび病」は、関東では11部会中2部会しか選ばなかった一方、九州では6部会中5部会が選択した。
生理障害
困っている生理障害では、8割にあたる21部会が「裂果」を選んだ=グラフ3参照。幼果期の日焼けや、根からの吸水が活発になる高温期の多かん水などで、果実肥大時に果皮の形成が追い付かなくなることで発生する。2番目にカリウム不足が原因とされる「葉先枯れ」(8部会)、次いで高温が続くと発生が増える「着色不良」(7部会)だった。
対策として、「裂果しにくい高温に強い品種の導入」(関東地方)、「遮光剤の活用」(東海地方)、「天候や作物の栄養状態に合わせた温度管理」(九州地方)を挙げた。
18部会が新品種の導入を検討
今後取り入れたい資材では、18部会が「新品種」と答え、期待が高かった=グラフ4参照。「環境制御装置」(7部会)や、「燃油高騰対策資材」(6部会)、「バイオスティミュラント(BS)資材」(6部会)も人気だった。