日本農業新聞 編集局 報道部
省エネなど環境配慮への取り組みが、トマトの生産現場でも重要な経営課題に浮上している。農水省は2024年度、環境負荷低減のための最低限の取り組みの実践を、全補助事業の要件にする「クロスコンプライアンス」=メモ=を試行的に導入。負荷低減への貢献度合いを算定し、農産物の販売時に星の数で示せる制度も始めた。トマト生産者向けに、各制度の仕組みや要点を紹介する。
メモ:クロスコンプライアンス
クロスコンプライアンスとは、各種補助事業で、補助を受けるために必要な要件などを設定すること。
27年度から本格実施 チェックシートを提出
同省は「クロスコンプライアンス」について、2024~26年度を試行期間と位置付け、27年度から本格実施を目指す。
24年度から必要となるのが、補助事業を申請する際の「チェックシート」の提出だ。トマト生産者が対象となる「農業経営体向け」のチェックシートでは、①適正な施肥②適正な防除③エネルギーの節減――など7項目について、「肥料の使用状況などの記録・保存に努める」「省エネを意識」といった取り組みの実施意思を記入する。
例えば、加温が必要となる冬春トマトでは、「必要以上の加温、保温を行わない」「機械、器具を定期的にメンテナンスし、燃料効率を維持する」など基本的な取り組みを実践していれば、チェックを付けられる。シートの項目を意識することで、無駄なコストの削減にもつながる。
同省は25年度以降、チェックを入れた項目で、事後報告の提出も求める方針だ。そのため、日頃から栽培管理や、ハウスで使う電気、燃料の使用状況の記録も重要となる。
温室効果ガス削減貢献率 「見える化」ラベルでPR
環境負荷低減の取り組みを可視化し、消費者や実需者が農産物を選ぶ際の新たな選択肢にする試みも始まった。
農水省が3月から本格運用を始めた環境負荷低減の「見える化」ラベルでは、化石燃料の使用低減など栽培管理での実践内容を基に、温室効果ガスの削減貢献率を算定し、星印の数で貢献度を示す。例えば、地域の慣行栽培と比べた削減貢献率が20%以上の場合、最高の“三つ星”ラベルを販売時に表示できる。
トマトは、大玉が露地と施設栽培、ミニが施設栽培のみ対象となる。中玉はミニに分類して評価する。取り組む場合は、同省のホームぺージでガイドラインを確認し、算定に使うシートを入手する。栽培データをシートに入力し、同省に提出して登録番号が与えられると、ラベル表示が可能となる。
同省によると3月末時点で、スーパーや飲食チェーンなど延べ789カ所でラベルを表示した農産物が販売された。「同程度の値段であれば、環境に配慮した農産物を選ぶという消費者の意識は確実に高まっている」(大手スーパーの青果バイヤー)との声もあり、トマトの新たな付加価値としても訴求できそうだ。