産地事例紹介
5種類の量目で出荷 庭先調製から解放

2023.11.30
茨城県 JA北つくば 東部とまと選果場部会
栽培技術を話し合う柳田部会長(左)と大和田青年部長

 茨城県のJA北つくば東部とまと選果場部会は、拠点の選果場でさまざまな量目に包装して出荷し、実需者ニーズに応えている。部会員は、庭先での調製作業に手間を取られなくなり、栽培管理に注力することで品質が向上。品質の高いトマトを、ニーズに合わせた出荷で販売を有利に進める。

猛暑影響し収穫量は3割減
高単価で例年並み収益見込む

 JA北つくばは、茨城県の南西部に位置し、筑西市、桜川市、結城市の3市にまたがる広域JA。東部とまと選果場部会は、2004年に設立し、現在は部会員83人で23・2㌶栽培する。主力である夏秋の抑制トマトは65人が生産する他、春トマトも栽培している。
 本年度は6月下旬に定植が始まり、8月20日から収穫。12月5日まで続く。
 猛暑の影響で収穫量は3割ほど減ったが、全国的な不作で販売単価は高騰。10月半ば過ぎからは、レギュラーの4㌔箱で6000円を突破し、ピーク時は6500円まで上がった。今のところ、単価増で減収分をカバーし、例年並みの収益を見込む。 

量目は5種類、階級は七つ
裂果は人の目で判断

 販売を支えるのが、18年9月に新たに導入した選果システムだ。無落差ベルト式の選果方式で、選果時の転がりやコンベヤーの落差で起こる傷みなどを防ぐ。光糖度センサーの他、形状選別機、カラーセンサーも装備する。
 部会員は選果場にコンテナで出荷し、トマトは選別作業をする2階へエレベーターで運ぶ。
 機械判別する項目は、重量、形状、糖度、色彩、花落ち、楕円ずれ。上部からカメラでチェックする。さらに横部分の裂果の状態などを人の目で判別し、A、B、無印、Cに等級分け。3Lから3Sまで7階級に分類する。
 出荷量目は5種類。4㌔箱、1㌔箱、スタンドパック(400㌘以上)、フードパック(450㌘)、コンテナ出荷(3L~5Lクラス)だ。
 スタンドパックやフードパックは、スーパーなど実需の要望で始めた荷姿だ。一方、部会側でも4㌔箱では単価の出ない3Sサイズを使い、ひと手間かけることで付加価値をつけて販売できるメリットがある。
 特にスタンドパックは、パート職員がキッチンスケールを使い個数を調整。手作業で封入している。 

販売を支える選果システム

着色基準守り広がる認知
出荷してすぐ店頭に

 スーパーでは、このまま店頭に並べられるので、バックヤード作業が省力化できる。
 部会員も、かつて庭先で手詰めしていた時代は、ピーク時には作業場で寝てしまい朝を迎えたこともあったという。今では手詰め作業から解放され、その時間を栽培管理に回すことで品質面でも向上した。
 部会長の柳田裕司さん(50)は「この選果場では、できるだけ実需者のニーズに応えてきた。量目の要望もその一つ」と話す。機械選果で色目にもこだわってきた。着色基準を暑い時期と涼しい時期で変え、実需側が着色のためにトマトを滞留させることなく、すぐに店頭に並べられるようにしている。
 このこだわりが、ここ2、3年評価され、「高品質産地に指定されたり、プライベートブランドに入れてもらえたりと認知されるようになった。それが価格面にも反映されてきた」と目を細める。

実需の要望で多くの量目に対応

猛暑・黄化葉巻病対策を徹底
試験栽培で優良品種調査

 品種は暑さが厳しくなってからは、裂果しにくい品種や黄化葉巻病に強い品種を導入。その他に同病対策としてハウスの開口部に0・4㍉目合いの防虫ネットを張り、ローテーション防除を徹底する。
 部会では、大和田直輝さん(38)が青年部長と生産技術委員長を兼務。試験品種を導入し調査している。既存品種でも成績の良かった部会員を講師に、報告会を実施。成功事例を部会全体に横展開する。
 暑熱対策には、遮光剤「レディソル」を屋根面に塗布したり、涼感シートをかけたりして温度上昇を抑える。また、トマトは25度を下回らないと消耗してしまうため、通路に散水チューブを敷設して気化熱でハウス内の地温を下げている。
 高温過ぎると蒸散できなくなるため、動噴で水を噴霧し、トマトの木自体にかけることで湿度を上げ、蒸散を促して水分を吸わせる。
 このような技術は、生産技術委員会が発行する「営農情報」でその都度、部会員に注意を促している。

若い就農者が安心できる産地に
調製請け負い“働き方改革”も

 柳田部会長は「部会では高齢化が進むが、この選果場があることで若い就農者が安心してトマト栽培に取り組めるようにしていきたい」と話す。
 調製作業を選果場が請け負うことで、部会員の働き方改革もできるようになっている。「今後は、現在も個人で手詰めをやっている人などに部会に入ってもらい、選果施設の稼働率を上げていきたい」と展望する。

「夏和恋」のハウス