全国の青果担当者に実施したアンケートでトマトに求める要素を聞いたところ、小売店と卸売会社ではわずかに違いがあることが分かった。複数回答で最も回答が多かった要素は50人のうち36人が挙げた「高糖度」。内訳は小売り32人中28人とおよそ9割が高糖度を挙げたのに比べ、卸売会社は18人中8人とおよそ4割にとどまった。
卸は果肉の硬さ重視
青果担当者アンケートは146社に依頼。売れ筋トマトの種類や量目、荷姿などについて小売店29社、卸売会社19社の青果担当者ら51人から回答を得た。
求める要素では、50人が答えた=グラフ1参照。卸売会社で最も回答が多かった要素は18人中14人が選んだ「果肉の硬さ」。「果皮が厚い」も6人が選んだ。売れ筋の種類にミニトマトを挙げた32人(小売り21人、卸11人)のうち「果肉の硬さ」は15人で、卸売会社に限ると11人中9人が硬さを選んだ。
果皮の品質では、小売りは32人中15人が「薄い」を選んだが、卸は18人中1人。ミニトマトに限ると小売り21人中12人、卸11人中1人となった。
自由記述では「とにかく、硬くて割れにくく棚持ちが良いもの」(近畿地方の卸)、「消費者に届く前に、仲卸や店舗バイヤーに品質で門前払いになることが多いため、味よりも玉が硬く棚持ちが良い特性が好まれる」(九州地方の卸)など、品質の安定、流通過程での傷みの少なさ、棚持ちの良さを挙げる声が目立った。夏場の高温で品質が安定しないことから、流通過程による品質低下の懸念が背景にあるとみられる。
一方、「とにかく甘さだけに特化したトマト」(北海道の小売り)など、小売りからは差別化するためにも高糖度を求める声が多かった。
「消費者ニーズはおいしい、お値打ち、甘いが上位になると思われるが、流通ニーズは棚持ち、色目、おいしいになると思う。なぜなら、柔らかい軟化玉のトマトはお客さまから手に取って頂けなく、いくらおいしくても口に入れる前にクレームで返品される。また、青いトマトは売り場で売れ残ってしまうので、赤くても硬いおいしいトマトがベスト」(中部地方の卸)とニーズの複雑化を指摘する。消費者に販売する小売店と小売店や飲食店向けに販売する卸売会社では、求めるトマト像にわずかながらずれがみえた。
複雑化するニーズ
棚持ち求める声も
アンケートでは、食味を重視する小売りでも7人が自由記述で棚持ちの良さを求める声を挙げた。「最もトマト、ミニトマトが少ない時期になる9~10月に、量が出るもの」(関東地方の小売り)、「夏場の着果不良で9~10月の収量が減少するため、着果しやすく収量が安定する品種」(西日本の小売り)など、猛暑による影響が出る9月以降の品質の維持と安定出荷を求める声が目立った。
全国21の生産部会が回答した部会アンケートでも12部会が高温対策の継続、検討を次作の課題に挙げた。特に北海道・東北地方になると9部会のうち7部会が安定生産、1部会が作業者の労力軽減に高温対策の必要性を訴えた。
地球温暖化で夏の栽培が難しい産地が増える中、中部地方の小売りは「優れた生産者のトマトがほしい」と産地の努力に期待する。生産から販売の幅広いニーズに応えるため、課題に対応した品種や資機材が求められる。