複数技術で発生予防
高温の影響に注意を

2023.11.30
日本農業新聞 編集局 報道部

 トマトの重要病害・黄化葉巻病は、防除が確立し、西日本の産地を中心に対策が進む一方、発生域が拡大傾向にある。害虫では、トマトキバガの確認地域が拡大。地球温暖化で栽培期間中の高温期が長期化する夏秋トマトは、病害虫への対応の重要性が増している。

黄化葉巻病

 タバココナジラミが媒介する黄化葉巻病が、トマト産地を悩ませている。感染すると葉が小さく、巻かれたような症状がみられ、大幅に減収する。温暖化が進む中、今年は同病に抵抗性を備える品種でも、高温下では発病するとの研究結果が報告された。薬剤への抵抗性も発達しやすいため、化学農薬のみに頼らない総合的病害虫・雑草管理(IPM)の徹底が重要になる。
 黄化葉巻病は世界的なトマトの重要病害で、国内では1996年に静岡、愛知、長崎の3県で初確認された。発生が拡大し、2009年時点で関東以西の34都府県で確認された。近年は岩手や福島など東北地方にも拡大。直近では22年11月18日に宮城県で確認され、計42都府県に広がった。
 病原となるウイルスへの抵抗性品種が開発・市販されている一方、近畿大学の研究グループは今年、抵抗性を持つ大玉トマト品種でも高温にさらされると発病するとの報告を発表。七つの抵抗性品種にウイルスを感染させ、日中35度、夜間20度で3週間栽培したところ発病した。詳しい仕組みは未解明だが、厳しい暑さが長期に続く場合、抵抗性品種でも被害が広がる可能性があるとする。
 農研機構は、化学農薬に加え、防虫ネットの設置など物理的な対策も含めたIPMの実践が重要と指摘。同機構がまとめた同病の防除マニュアルでは、多発を防ぐための対策として①育苗・定植期の侵入・感染防止のため、ハウスにタバココナジラミを入れない②ハウス内で増やさないよう定植後の感染拡大を防ぐ③施設内外の雑草や野良生えトマトを除去する④抵抗性品種を選択する――などを挙げる。
 近年はタバココナジラミの天敵となるタバコカスミカメを生かした防除体系が確立。樹体を振動させることで、同害虫の幼虫の密度を下げる方法も確立された。新たな防除方法の登場で、IPM体系がより充実してきている。

トマトキバガ

 海外で猛威をふるう害虫・トマトキバガも国内で確認が相次ぐ。21年に熊本県での初確認以降、発生は37道府県に上る(11月末時点)。フェロモントラップによる圃場(ほじょう)外での確認がほとんどだったが、11月には夏秋産地の大分県が多数の圃場(ほじょう)で被害を確認したとして、全国初となる注意報を発表。産地への定着が懸念されている。
 トマトキバガは、トマトなどナス科植物を加害する。トマトでは幼虫が葉や茎、果実に潜り込んで腐敗の原因となる。被害が大きいと株が枯れて大幅に減収する。
 大分県では9月下旬から県内9カ所のフェロモントラップによる捕殺数が急増。10月18日までの約3週間で雄成虫328頭を捕殺した。県は、薬剤抵抗性がつかないよう殺虫剤のローテーション散布を呼びかける他、越冬の可能性を考え、収穫後も薬剤をまくことや年内の残渣(ざんさ)処分などを求める。侵入原因や効果的な防除方法など未解明な部分が多く、農研機構などが研究を進める。