ヒートポンプフル活用
10a収量7.7t 県平均の2倍

2025.02.26
千葉市の観光農園

 夏場の冷房、冬場の加温とさまざまな用途に使えるヒートポンプを、イチゴ生産に活用する取り組みが進んでいる。千葉市の観光農園・ワイズアグリでは、ヒートポンプと環境制御機器による夏場の夜冷育苗で早期定植を実現し、冬場はダクトを活用して効率的にハウスを加温する。

簡易夜冷で定植前倒し

 ワイズアグリは、ハウス内にヒートポンプを設置して夜冷育苗と補助暖房に活用している。育苗では簡易夜冷ながら、定植を1週間早めることができた。冬季の日中は補助暖房として使い、重油の使用量削減にも役立てている。
 同社は2020年に設立し、ハウス3棟、計22.8aで栽培する。高設の養液栽培で、24年度は「紅ほっぺ」「かおり野」「章姫」など13品種を作る。労働力は社員2人の他、アルバイトを15人雇っている。
 設立当初から統合環境制御システムを導入している。ハウス内や生育状況を“見える化”し、最適な栽培環境を整えることで、10a当たり収量は県平均の2倍以上の7.7tを実現した。業務執行社員の澁谷陽平さん(35)は「データを用いた安定生産のために最新技術は積極的に取り入れたい」と強調する。
 ヒートポンプは24年3月に、1.8aの育苗ハウスと新設した5aのハウスに各1台導入した。機種はいずれも㈱イーズ(東京都港区)の「ぐっぴーバズーカエクストラタイプ」。導入には千葉市の事業を活用した。
 育苗ハウスでは簡易夜冷に使う。24年度は8月19日から9月17日まで、日の入り1時間前から日の出1時間後まで運転した。
 ヒートポンプの設定温度は10度にしたが、実際のハウス内温度は約19度だった。それでも夜冷の効果で花芽分化が促進し、定植日を例年より1週間早めることができた。
 澁谷さんは「定植が早まることで、収穫開始が早まり、栽培期間中の開花も1回増えて収量アップにつながる」と期待する。
 しかし24年度は定植後に暑さが続いたため、夜冷で促進された花芽が傷んでしまい、収穫開始は例年より1週間遅れた。今後は定植後の暑さ対策が必要とみる。

環境制御機器でハウス内の状況を見える化(千葉市で)

ダクト使い効率的暖房

 5aの栽培ハウスでは、ヒートポンプを補助暖房として使っている。日の出1時間半後から日の入り1時間前までは、ハウス内温度が21度以下になったら稼働させる。温風は送風運転をさせている重油暖房機に吸わせ、各栽培ベンチの下を通すダクトに送り込んで、ハウスを効率的に温めている。
 ヒートポンプを使ってもハウス内が19度を下回る場合、重油暖房機も運転するよう設定した。ヒートポンプを導入したハウスでは、暖房機だけのハウスより、暖房機の運転時間を57時間削減することができた(24年10月21日から25年1月27日時点)。
 澁谷さんは「重油の使用量を削減し、環境負荷も軽減できる」と話す。今後は、収穫期間中の夜冷にも活用し、品質向上や長期収穫にも挑戦する。

温風をダクトに供給してハウスを温めている(同)

創意工夫し接客を重視

 イチゴ狩りは、1組1棟貸しで6品種の食べ比べを売りにする。新型コロナウイルス禍に開園した際の感染対策だったが、来園者に特別な空間で楽しんでもらうために継続している。1組ごとに品種や収穫の仕方、食べる順番などを10分ほどかけて説明。写真の撮影スポットやキッズスペース、ベビーカーの貸し出しなどのサービスも充実させた。澁谷さんは「イチゴの品質だけでなく、接客に重点を置いている」と強調する。来園者の25%がリピーターで、旅行予約サイト「じゃらん」の評価では5点満点中4.9点の高評価だ。今後も地域に愛される観光農園としてサービスの充実と安定生産を目指す。