農研機構 植物防疫研究部門 果樹茶病害虫防除研究領域 果樹茶生物的防除グループ グループ長 須﨑浩一
2024年は、前年の記録を更新し、観測史上最も暑い年となった。夏季の高温だけでなく残暑も長引き、梨の日焼け、ブドウの着色不良、桃の早期落葉など複数の樹種で高温による障害が起こり果樹生産にとっては厳しい年となった。一方で注意報の発出は近年では目立って少なく、カキ炭疽(たんそ)病、カンキツ黒点病、かんきつ類の黒点病およびかいよう病のみであった。今後もこのような極端な気象が繰り返されるのか予想できないが、気象予報を活用するとともに、小まめに圃場(ほじょう)を見回ることで適切なタイミングでの防除に努めていただきたい。また薬剤の効果を十分に発揮させるためには圃場衛生の管理に努め、病原菌密度を低く維持することが重要である。ここでは、梨、桃、ブドウにおいて今後も注意すべき病害と対策について紹介する。
ナシ黒星病
葉および果実に発生する。本病の生活環は越冬した被害落葉にできた胞子が新葉や幼果に感染することで始まる。初期防除の薬剤としてDMI剤が卓効を示し長く利用されてきたが、耐性菌が確認されるケースがある。
代替の殺菌剤としてQoI剤、SDHI剤が有効であるが、いずれも耐性菌の発生が懸念されるため使用回数を守ってほしい。重点防除時期は開花直後から落花期にかけてであり、その後も定期的な殺菌剤散布を行う。
秋季に感染を受けた芽のりん片も重要な伝染源であるため、収穫後も防除を行い、りん片への感染を防ぐ。

モモせん孔細菌病
葉、枝および果実に発生する。病原細菌は前年秋に落葉痕や皮目から枝組織内に侵入・越冬し、翌年気温の上昇とともに春型枝病斑を形成する。春型枝病斑から風雨によって分散した病原細菌は新葉や幼果に感染し被害を拡大する。防除には無機銅剤と抗生物質剤が使用されるが卓効を示す殺菌剤は見当たらない。
このため防除は薬剤と耕種的な手法を組み合わせて行う。薬剤防除は開花直前に無機銅剤を散布して初期感染を防ぎ、以降、梅雨明けまで定期的に散布を行う。圃場衛生の管理に努め、枝病斑、罹病(りびょう)葉および罹病果実は見つけ次第、徹底して取り除く。
収穫後も翌年の伝染源を減らすため、無機銅剤の秋季散布を行う。


ブドウべと病
主に葉や幼果に発生する。生育期に降雨が多く日照が不足する条件で発生しやすい。雨水で感染を広げるため梅雨期のように連続した降雨がある場合には短期間のうちに被害が急増することがある。防除にはマンゼブ剤、QoI剤、無機銅剤などが使用される。開花前から梅雨明けまで定期的に薬剤を散布する。散布時期に降雨が予想される場合には延期せずに降雨前に散布を終わらせる。また前回の散布から次の散布までの日数が開かないように注意する。
登録薬剤には耐性菌が発達しやすいものがあるため散布回数は必ず守るようにする。
