公益財団法人 日本植物調節剤研究協会 事務局 技術部 山木 義賢
水田にはノビエ、ホタルイなど多様な雑草が発生するが、これらは繁殖方法により一年生雑草と多年生雑草に大別される。ノビエ、コナギなどの一年生雑草は種子で繁殖する雑草であり、非常に多くの種子を生産して、土壌中での種子の寿命も長い。クサネム、タウコギなどのように田面が露出しているところから発生する雑草もある。一方、多年生雑草は土壌中の塊茎や根茎などの繁殖体に栄養分を蓄えて、翌年そこから芽を出す雑草である。多年生雑草が作る塊茎や根茎は、一年生雑草が生産する種子に比べて数は少ないが、地下の深いところからも発生が可能である他、数個の芽を持つものもあって、繁殖力は強い。多年生雑草には、ミズガヤツリ、ヒルムシロ、セリなどの他に、オモダカ、クログワイ、コウキヤガラ、シズイのような防除が難しい問題雑草も含まれる。ホタルイは越冬する場合があるため多年生雑草に分類されているが、水田では種子からの発生が多く見られる。この他、最近では雑草イネや特定外来生物のナガエツルノゲイトウなどの雑草が、防除が難しいことや繁殖力が強いことから防除対象として挙げられることが増えている。


剤選択のポイント
水稲用除草剤は、移植水稲では一発処理剤、初期剤、中・後期剤に大別される。一発処理剤は、水田に発生する主要な一年生雑草、多年生雑草に効果が高く、効果の持続期間も長いため、条件の良い水田で正しく使えば一発処理剤の散布だけで水田に発生する雑草を防除することができる。
初期剤は代かき後の早い時期から発生してくる一年生雑草を抑えることを主な目的として、代かき時から田植え後の早めの時期に使用する。初期剤は効果の持続期間が短い薬剤が多く、一般に後処理剤と組み合わせる。
中・後期剤は、初期剤の効果が消失した後に発生する雑草や、除草剤散布後に完全に抑えられなかった雑草を防除する薬剤である。中・後期剤には湛水(たんすい)状態で散布する薬剤の他に、水に希釈して散布器具を用いて散布する薬剤や、落水状態で散布することが必要な薬剤などもある。
直播(ちょくは)水稲の場合では、移植水稲よりも栽培期間中の雑草を長期間防除する必要があり、除草剤は基本的に組み合わせて使用する。いくつかの薬剤では湛水直播栽培において発生する主要雑草を一回の散布で防除する可能性があることが確認されている。
除草剤は、発生する雑草の種類と大きさを基に選定する。ノビエやホタルイなどの主要な雑草は多くの水田において防除対象になるが、この他にも除草剤を散布して残った雑草など、前の年に発生した雑草は次の年も発生する可能性が高い。オモダカ、クログワイなどの問題雑草は、一回の除草剤散布では防除することが難しく、有効な除草剤を組み合わせて使用することが必要になる。一発処理剤の中には問題雑草のどれかには一回の散布で体系処理と同等の防除効果が期待できる薬剤がある。


使用の留意点
除草剤の使用前には農薬ラベルの適用内容および除草効果と薬害に関する注意事項をよく確認する。農薬ラベルには除草剤の使用時期、使用方法などの基本的なことに加えて、薬害が発生しやすい条件や、雑草の種類別に除草効果が発揮できる大きさなどが記されている。ラベルをよく読み、雑草が大きくなりすぎず、除草剤の効力が発揮できる早めの散布を心がける他、薬害の発生に関係する植え付け精度や砂壌土水田での使用に留意する。
除草剤を散布する際は、薬剤が水田の外に流出しないように注意する。耕起・代かきを丁寧に行い、水田の均平化を図り、畦畔(けいはん)は補修しておく。水尻やモグラ穴などから田面水が流出しないように畦畔を確認する。また、散布後はかけ流しを行わない。水深が浅い箇所では有効成分が拡がらずに雑草が残りやすくなるため、丁寧な均平作業や水管理が必要となる。ジャンボ剤や拡散性粒剤などの剤型は、特に散布後に有効成分が水田全体に均一に拡がる必要がある。除草剤の湛水散布後しばらくの間は有効成分が田面水中に多く溶けているため、散布後7日間は特に流失に注意する。
HPで対策紹介
当協会では今回の内容に関して、問題雑草一発処理剤、直播水稲一発処理剤、雑草イネ有効剤、ナガエツルノゲイトウ有効剤などの情報をホームページに掲載しているので参照されたい(https://japr.or.jp/)。