農研機構 植物防疫研究部門 作物病害虫防除研究領域 病害虫防除支援技術グループ グループ長補佐 髙篠 賢二
気象庁の記録によると2024年の夏は気温が全国的にかなり高く、昨冬もかなりの高い気温であったことから、斑点米カメムシ類の発生には好適な条件であった。病害虫発生予察情報においても斑点米カメムシ類は7~9月にかけて広い地域で発生が「多い」もしくは「やや多い」と予想され、31道府県から延べ39件と昨年度の倍以上の注意報が発表された。この他、大分県で平年より1カ月ほど早くトビイロウンカの発生が確認されたことから、6月20日に同県の早期水稲などにおいてトビイロウンカの注意報が発表された。その後も熊本県などで多数の飛来が認められたことから、本種による深刻な被害の発生が懸念されたが、以降に発令されたのは高知県の注意報1件のみであった。
斑点米カメムシ類
斑点米カメムシ類は畦畔(けいはん)や休耕田のイネ科雑草などで増殖し、稲の出穂に伴って水田に侵入して、もみから玄米の汁を吸うことにより米粒の一部または全体が変色・変形した斑点米を発生させる。近年、斑点米カメムシ類は全国的に多発生の傾向が続いており、発生地域では適切な防除対策を行う必要がある。東北や北陸地域では、温暖化によるクモヘリカメムシなどの大型種の分布拡大が懸念されている。また、近年発生量増加や分布拡大の傾向にあるイネカメムシが24年も関東以西でその傾向を強めており、本種を対象害虫とした注意報が3件、種名を含むものは13件発令された。本種は、斑点米を発生させるだけでなく、登熟初期の穂を加害して不稔(ふねん)粒を発生させるため、多発すると大幅な減収の要因となる。
防除対策としては、カメムシの増殖源となる水田周辺の雑草を適切に管理することが重要である。農道や畦畔の雑草を稲の出穂1~2週間前までに刈り取り、稲の出穂期前後にイネ科雑草の穂が出ないように管理すると、カメムシ類の発生を抑制し水田への侵入量を減らすことになる。
一方で、稲の出穂期以降に穂の出た雑草を刈り取ると、水田にカメムシ類を呼び込むことになる。また、水田周辺だけでなく、水田内に雑草を生やさないように管理することも大切である。
本田での薬剤防除は稲出穂後の殺虫剤散布が基本となる。一般に穂ぞろい期~出穂10日後に散布し、発生量が多い場合はその7~10日後に追加散布する。ただし、カメムシの種類や発生量、薬剤の種類により適切な散布時期・回数に若干の違いがあるので、病害虫防除所などの情報、指導を参考にして防除を行う。


トビイロウンカ・セジロウンカ
トビイロウンカとセジロウンカは日本では越冬が不可能であり、毎年梅雨期に中国南部などから下層ジェット気流に乗って国内に飛来する。九州地域を中心として西日本で飛来が多い傾向にあるが、飛来時期・量・回数は年によって変動するため、毎年の飛来状況を把握し、その後の発生に注意する必要がある。近年では、2020年にトビイロウンカが多発し、11府県で警報が出され、各地で坪枯れの被害が出ている。
防除対策としては育苗箱施薬剤の利用と本田殺虫剤散布があげられるが、一部殺虫剤に対し薬剤感受性が低下している事例が報告されており薬剤の選定には注意する。両種による被害が警戒される地域では、育苗箱施薬剤による対策に加え、必要に応じ適期に本田防除を実施する。トビイロウンカ多飛来時は中期・後期の基幹防除、臨機防除を徹底することが大切である。また、本田防除の場合は、薬剤がウンカ類の生息場所である稲の株元まで十分かかるよう心がける。
