全国の青果担当者に実施したアンケートで、小売り32人に売れ筋の量目と価格帯を聞いた。ミニトマトでは200㌘以下、中玉・大玉は200㌘台が売れる量目とみられる。ただ、今夏は猛暑の影響で品薄が長期化し、価格高騰に悩んだ小売店も多かった。ミニトマトの荷姿では、小売り・卸の50人のうち「産地でのパッケージ詰め」を希望する声が20人と最多だったが、卸だけで見ると回答者18人中10人の半数以上が「バラ詰め」を選択。拮抗(きっこう)する結果となった。
ミニトマト
荷姿について
産地でのパッケージ希望最多
青果担当者らが選んだ最も売れ筋のミニトマトで、求める仕入れ時の荷姿を聞いたところ、回答した50人(小売り32人、卸18人)のうち20人が「産地でのパッケージ詰め」を希望した。ただ、「バラ詰め」も18人が希望し、拮抗する結果となった。人手不足でパッケージ詰めを望む一方、売れ筋商材の設定、高値・安値に対応できる自社パッケージもニーズが高く、コスト削減、売れるトマトを求めて試行錯誤する状況が浮かび上がった=グラフ1参照。
人手不足、人件費高騰が影響
「産地でのパッケージ詰め」の内訳は、小売り32人中14人、卸売会社は18人中6人。「人材不足に伴い、作業時間の確保が難しい」(九州地方の小売り)、「店舗の人員不足で商品化に時間を割けない」(北海道の小売り)など人手不足の他、4人が「作業軽減」を挙げた。
また「首都圏は人件費がどんどん上がっている。産地で詰めてくれた方が同じ人数で作業してもコストがかからない」(関東地方の小売り)、「詰め賃が上がり、販売に苦戦」(東北地方の卸)と人件費の高騰を理由に挙げる回答も目立った。
バラ詰め、産地パック双方需要も
「バラ詰め」を選んだのは小売りで32人中8人と4分の1だったが、卸は18人中10人と半数以上が希望した。「市場で加工して販売するため」(東北地方の卸)、「いろいろなグラム売りができ、売価調整ができる」(東海地方の卸)など、品質維持が難しかったり、天候に左右され値動きが大きかったりする夏秋トマトでは、柔軟に対応したいという意向がうかがえた。
小売りでは「他店とは違う形態で販売できるから」(関東地方)、「店舗で加工した方が売れ筋、少量対応がしやすい」(中四国地方)と、地元の消費者ニーズに合わせやすさを挙げた。
また、「産地パックは応用が利かない、1粒傷んでいたら面倒、そもそも販売者側が量を決めてよいのか疑問。(他の商品にも言えるが)消費者の選ぶ権利を阻害している、売り場の最も近いところで品質を見ながらパッケージすべき」(関東地方の小売り)と、仕入れたトマトの品質に合わせた販売を希望する声もあった。
おいしいトマトを消費者に届ける
「房付き」では「差別化および鮮度感がある」(関東の小売り)、「房付きトマトはミディトマトか高糖度ぐらいしかなく、房付きのアソートが欲しい」(関東の小売り)と2人が希望。「産地でのパッケージ詰め」を選んだ関東の小売りの1人も「房付きが欲しい」と答えた。大消費地で付加価値を高めた販売が有利とみる。
「その他」では、3人が「バラ詰め、産地パックともに需要あり」と回答。「夏場は傷む事故が多いためバラが良い」(四国地方の卸)、「顧客ニーズの多様化」(関東地方の卸)などの声があった。また、「人の手に触れる回数を減らして鮮度向上を図るため、収穫したものを選果機にかけずにパック詰め」(東海地方の小売り)、「夏場はミニトマトのへたかびのロスリスク減のため、バラ詰め、へた無し」(関東の小売り)と、産地が出荷した自慢のミニトマトの品質を低下させることなく消費者に届けることを最優先に考えていることが分かった。
量目
売れ筋の量目は29人が回答。最も多かった量目は「150~200㌘」の25人だった=グラフ1参照。「150~200㌘」を選んだ25人が答えた価格帯は「101~200円」が15人と最多となった。量目では他に「100~149㌘」(3人)、「201㌘以上」(1人)と答えた。価格帯では「201~300円」(6人)、「301~400円」(2人)、「401円以上」(1人)、「100円以下」(1人)となった。
300円以上の高価格帯を回答したのは、百貨店や有機野菜をメインに扱う小売店で、付加価値を高めて販売していることが考えられる。また「通常は198~248円の販売だが、現状品薄」(関西の小売り)と今夏の生産状況に影響を受けた回答もあった。
中玉・大玉
中玉の売れ筋の量目は23人が回答した。「200~299㌘」が17人と最多。次いで「100~199㌘」(4人)、「300㌘」(2人)となった。
「200~299㌘」の価格帯は9人が「201~300円」、「200円以下」「301~400円」をそれぞれ4人が回答した。=グラフ2参照。
大玉の売れ筋の量目は19人が回答。最も回答が多かった量目は8人が答えた「200~299㌘」。「500㌘以上」(6人)、「100~199㌘」(5人)と続いた。ただし、100~299㌘は1玉、500㌘以上は箱で販売していることから、実際には1玉販売が13人と半数以上を占める。=グラフ3参照。
8人が回答した量目(「200~299㌘」)の価格帯は「100円未満」が4人と半数が答えた。1玉200円以上と高価格を回答したうち、関東の小売りは「現状1玉200円。品薄で250円に上がりそうだが、2玉で500円にすると売れない。なんとか1玉200円に抑えている」と、今作の販売の難しさを話した。
青果担当者が選ぶ、おいしいトマト
1位は大玉「桃太郎系」
「ずばり、おいしいと思う品種」の質問では総合得点で54点を獲得した大玉品種の「桃太郎系(大玉)」が1位に輝いた。種類別に聞いた売れ筋のトマトでは回答者の6割以上が「ミニ」を選んだが、おいしさでは栽培・品種改良の歴史が長い大玉品種がミニトマト品種を大きく引き離した=図参照。
質問では最大3品種を選び、1~3位の順位を聞いた。小売り31人と卸17人の計48人が回答。1位を3点、2位を2点、3位を1点として総合点を集計した。
「桃太郎系」は21人(小売り13人、卸8人)が選び、小売りは8人、卸は7人が1位に上げた。
「桃太郎」はタキイ種苗が1985年に発売。完熟出荷を可能にし、高糖度、味の良さで革命をもたらしたと言われている。これまでに同シリーズで32品種が生まれ、いまは23品種を販売。2025年で発売から40年となるが根強い人気があることが分かった。
2位は35点を獲得した「キャロルシリーズ」。サカタのタネが育種。糖度が高く食味が良いのが特長。いまはプロ向け品種として「キャロルムーン」「ミニキャロル」「キャロル10」「キャロルパッション」「キャロルスター」の5品種を薦める。
3位は21点で中玉トマト「フルティカ」となった。タキイ種苗が育成した品種で平均糖度は6~7、栽培方法によっては10を超えることもある高糖度が特長。食味が良く、抗酸化作用のあるリコピンを多く含む。
上位3位は全て高糖度系とされる品種だった。無回答1人を除き、青果担当者50人が複数回答で答えた「求める要素」でも36人(小売り28人、卸8人)が「高糖度」を挙げ、自由記述の「こんなトマトが欲しい」では「高糖度系で価格を抑えつつ量販できる大玉トマト」「糖度が高く薄皮のトマト」「6、7月、10、11月に販売できる高糖度ミニトマト」などの声があり、「トマトのおいしさ=高糖度」の図式を裏付けた。ただ、「求める要素」では9人(小売り7人、卸2人)が、高糖度と酸度の両方を回答するなど糖酸バランスも重要とみる。
関東地方の卸は自由記述で「消費者が一番に求めているのは食味。糖度が高く、酸味もある品物が、コクのある、また食べたくなるトマト」と回答。トマトは生食が中心となり焼いたり、煮込んだり、どの料理にも使える万能野菜として「食卓には欠かせない野菜ということは、昔も今も変わっていない」と指摘する。