地域の小学生が地元食材を使った本格調理を体験
食と農への理解を深める場を提供しています
次世代を担う子どもたちに、地域農業への理解を深めてもらいたい。そんな想いから、北海道のJA今金町は町内の小学6年生を対象に、地元食材を使用したスープカレー作りを体験する食育教室を主催しています。
JA共済は「地域・農業活性化積立金」を活用し、この取り組みを支援しています。
今金町の多彩な農産物で小学生が本格調理に挑戦
「玉ねぎはもっと炒めたほうがいいかな?」「いい匂いがする!」
今金小学校の家庭科室は、調理台を囲む児童たちの熱気とにぎやかな声であふれています。
今日は年に1度行われる「JA今金町食育教室」の開催日。2021年度に始まったこの取り組みは、今年度で3回目を迎えます。
調理講師を務めるのは、北海道のご当地グルメとして知られるスープカレーの有名店の井手剛シェフ。
調理に使うのは、今金町が誇るブランドじゃがいもの「今金男しゃく」を始め、米や人参、アスパラガスなど、地元で生産された食材ばかりです。
「自分の町で採れた新鮮な野菜だけでカレーを作れるなんて、すごく贅沢なことなんだよ」と語りかける井手シェフ。できあがったスープカレーを頬張った児童たちは、「苦手な野菜もおいしかった!」と笑顔を見せました。
農業の現場を知るJAにしか伝えられないことがある
JA今金町が食育教室を始めたのは、「地域の人たちに農業やJAの役割を自ら直接伝えていきたい」という想いからでした。農業が盛んな今金町でも、近年は高齢化による担い手減少や後継者不足が進行。未来の生産者や消費者となる子どもたちに、「農家がどのような働き方をしているか」「地元食材がどうやって生産されているか」を伝える必要性が高まっていました。
そこで子どもたちが地域の食や農に興味を持つきっかけづくりとして、食育教室を企画。調理実習に加え、JA職員や小学校の栄養教諭による座学も行い、今金町の農産物や地産地消について総合的に学べる構成にしました。
また講師の井手シェフから本格的なスープカレーのレシピを教わることで、思い出に残る特別な体験を提供。企画運営と座学を担当するJA今金町の工藤耕治課長は、「この体験を通して、人々の食を支える農業の尊さに子どもたちが気づき、大人になっても『今金町の食や農を応援したい』と思ってくれたらうれしい」と語ります。
親が農家だという児童は、「普段は当たり前のように地元のものを食べていたけれど、今日の授業で農家さんがいないと米も野菜も食べられないとわかったので、お父さん、お母さんに感謝したいです」と話し、農家の役割の重要性に気づいた様子でした。
今金小学校栄養教諭の本多未来さんは、「農産物の詳しい知識や生産者の生の声を伝えられるのは、農業の現場を知るJAだからこそ。当事者の言葉には重みがあるので、授業を聞いた児童も、農家さんへの憧れや尊敬など色々なことを感じ取っているようです」と話します。
JA今金町では今後も食育教室を継続し、地域に根ざした活動として定着させたい考えです。将来の「食と農の応援団づくり」を目指す取り組みを、これからもJA共済は支えていきます。
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近年はJAが主体となって食育活動を行う機会がなく、JAが直接地域の人たちに農業の役割や地元食材について伝える機会が乏しいことが課題となっていました。
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JAならではの食育活動を検討する中、隣町の小学校で地元食材を使った食育の授業を行っていると知り、現場を視察。子どもたちが地域の食と農に関心を持つきっかけになると考え、隣町の事例を参考に今金町版の食育教室を企画しました。
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町の教区委員会や小学校と調整を行い、2021年度から町内の小学6年生を対象に食育教室を年に1度開催。毎回実施後には児童からのお礼の手紙が届き、「地元食材のおいしさに気づいた」「農業に興味が湧いた」などの声が寄せられています。