日本農業新聞 編集局報道部 流通経済グループ
サンドイッチやハンバーガーの具材として、加工用途でも幅広く使われるトマト。スライスしやすく液だれが少ないなど加工適性が重視され、輸入品が一定のシェアを持つ。しかし近年、耐暑性に優れた硬めの国産品種が、加工適性も備えるとして調達が進む。加工用の専用品種を導入する国内産地も出てきて、加工・業務需要でのシェア獲得に期待が集まる。
硬め品種の評価上昇 収量高い専用品種も
調理パンや総菜の材料に使われるトマトは、多くが輸入品。海外で主体の赤系品種は、硬くてカット、スライスしても実がつぶれず、パンを濡らす液だれが少ないなど、加工適性を持つためだ。国産で多いピンク系は食味に優れる一方、こうした適性を備えた品種は少なかった。
輸入品優勢の市場に近年、変化が現れ始めた。厳しい暑さで夏秋期の安定供給が課題となる中、耐暑性品種の導入が全国で進展。高温下でも裂果しにくい硬めの品種が、加工適性も備えると評価を高めている。
そんな産地の一つが岐阜県だ。JA全農岐阜によると、県内3地区で耐暑性品種の導入が進む。セブンイレブンのサンドイッチなど総菜用に供給する。「加工用はロス率の少なさが重視される。今年は産地間で差が出たものの、県下ではおおむね計画に沿った供給ができた」(JA全農岐阜)と手応えをつかむ。
青果用・加工用のどちらにも向く「“ハイブリッド” な品種」(仲卸業者)に加え、加工向けの品種を生産する動きも出てきた。産業ガス大手エア・ウォーターのグループ会社、エア・ウォーター農園は、北海道千歳市と長野県安曇野市で、トマトを生産。計11ha ある作付面積の4割を加工向け品種が占める。
国内有数の大型温室では、天候データや室内の環境データを計測し、野菜の生育ステージに合わせて温度・湿度・太陽光量・かん水・二酸化炭素濃度を自動制御。天候の影響を極力抑え、収量と品質の安定を追求する。
収穫は3月末から11月末まで続き、10a収量は50tを誇る。同社は「輸入トマトが思うように調達できず、国産に切り替えたい要望は強い。ハイスペックの環境を整え、全国的に出回りが少ない9~11月にしっかりと供給し、圧倒的な収量で勝負する」と語る。


モスフードサービス 安定調達へ産地を開拓
実需者も産地開拓を進める。モスバーガーを運営するモスフードサービスは、生野菜は100%国産にこだわる。その中で最も多く使うのがトマトだ。全国の産地をリレーでつなぎ、1300店舗に年間供給する。
調達する野菜は、農薬・化学肥料について当該地域の慣行基準の5割以上削減を目標に掲げる。GAP(農業生産工程管理)指導員資格を持つ社員が産地を訪れ、管理状況を約200項目にわたって点検するなど、おいしく安全な野菜にこだわる。
「トマトショック」と呼ばれる需給逼迫(ひっぱく)に見舞われた2023年、加工用の赤系トマトの調達を始めた。生産者と共同出資した農場では、8月に定植して10月から出荷できる作型に挑戦。失敗を重ねながらも収量、品質とも一定の成果を挙げ23年、供給にこぎつけた。
「9、10月の端境期に安定調達するには考え方のシフトチェンジが必要だ」と商品本部。看板商材の供給を切らさないよう、新規産地を探していく。

(モスフードサービス提供)