AIを選果に活用

2023.06.01
広島・倉橋島「お宝とまと」

 広島県呉市倉橋地区でブランド「お宝とまと」を生産する倉橋町施設野菜生産組合は、人工知能(AI)を取り入れた選果に乗り出した。果形や傷の有無など細かく見分けて、出荷する果実の品質を均一化し、有利販売につなげる。県などと連携し、2022年産で、AIにトマトの品質を学習させる作業に着手。24年にも成績を取りまとめ、産地で本格運用を目指す。

品質の均一化狙う

 真っ赤な宝石を思わせる見た目の「お宝とまと」は、瀬戸内海に浮かぶ倉橋島の特産だ。島独特の水はけの良い土壌と、温暖な瀬戸内海気候を生かして、慣行栽培より水分を少なめにして樹上で完熟させる。実が締まった甘味の強いトマトに仕上げていることが特徴だ。

「お宝とまと」の選果作業をする倉橋町施設野菜生産組合の組合員(広島県呉市で)

 同生産組合は、8戸と1法人が約3・5㌶で栽培。品種を「ハウス桃太郎」に限定し、35年以上作り続けている。収穫は12月下旬に始まり、春先にピークを迎え、6月末までに約400㌧の出荷を予定。JAひろしまを通じ広島県内に絞った販売に取り組むが、品質のばらつきが販売面の課題という。

 生産組合では、若手を中心にデータに基づいた管理の研究に力を入れ、品質向上に余念がない。ただ、生産組合の立花隼人組合長は「産地が小さいため個人選別だが、どうしても出荷規格が不ぞろいとなってしまうのが長年の悩みだ」と打ち明ける。

 着目したのがAI選果だ。スマート農業化につながる技術を持つ企業と産地を結び付ける県の「ひろしま型スマート農業推進事業」の実証事業の一つとして、22年度にAI選果の開発を始めた。

 AIにトマトの品質を見分けさせるため、21年産の一部と22年産トマトの選果作業を撮影し、学習させた。ロス品としてはじき出す形状や表面の傷といった7項目を割り出し、作業者別・時間帯別にロス品の発生率を分析してデータ化できるようにする。

「お宝とまと」の選果作業が最盛の選果場
倉橋島特産の「お宝とまと」を栽培するハウス

農家の負担減期待

 将来的には、AIが分析した出荷規格の情報を生産組合で共有し、選果時に有効利用する考えだ。販売を担う同JA呉地域本部倉橋アグリセンターは「AI選果によって規格と品質が安定すれば、ブランド力が一層強化できる」と期待する。

 選果にかかる負担軽減効果も狙う。AIが選果の一部を担うことができれば、栽培経験がないパート労働者らに作業委託できる可能性がある。県は「農家は生産により専念できるようになる」(農業経営発展課)と、管理に手をかけることで、果実品質をさらに高められるとみる。

 県と生産組合は24年に一定の成果を取りまとめ、産地で運用開始を目指す。立花組合長は「産地では若手トマト農家が比較的多く、活発に活動している。AIをうまく使って、ブランド力の強化と産地の活性化に結び付けたい」と意気込む。