記者の目 流通動向 日本農業新聞 報道部  

2023.06.01

転換進むミニトマト
〝へた取り〟需要獲得

日本農業新聞 編集局 報道部

 近年、トマトは大玉からミニトマトへ作付けを転換する動きが目立つ。農水省統計では、2021年のミニトマトの作付面積は2680㌶と、10年間で3割増。トマト全体の面積がやや減少傾向にある中で比重が高まり、全体に占める割合は24%と、同7ポイント上昇した。冬春作はその傾向がより強く、21年のミニトマトの面積割合は30%。熊本県は10年間で13ポイント上昇して43%、静岡県が同22ポイント上昇の41%と、主産地で割合が高まっている。

需要拡大に三つの鍵

 需要面でミニトマトの拡大要因を見ると、三つの鍵がある。一つ目が食味だ。大玉は、春先の糖度が5、冬は4が一般的とされる。4を下回ると味が薄く、物足りなさが出る。一方、ミニトマトは冬でも糖度6、7を保つ産地が多く、安定した食味が人気を集める。

 二つ目が、アイテムの多様性。1パック200㌘を主体に、500㌘の大容量や、コンビニエンスストアでは120㌘の少量パックも目にする。客層や価格帯に合わせ、幅広く品ぞろえできる。

 三つ目が、包丁を使わなくて済む手軽さ。家庭用に加え、近年はサラダバイキングでも、カットすることによる鮮度面の不安がないミニトマトに需要が移りつつある。

 強みである手軽さを一層打ち出したトレンドが、へた取りだ。へたがしおれると鮮度の劣化が目立つことや、へたがすれて傷が付く不安から、給食、飲食店、小売りの各方面で、へた取りでの供給要望が強まっている。

 へたなしの定番が、JA全農のオリジナル品種「アンジェレ」。へたが取れやすく、生産者にも収穫、調製作業の手間を省ける利点がある。主産地の九州や関東をはじめ、東北や信越など各地で導入、生産拡大が進む。

ミニトマトは、量目、色、荷姿など
豊富なバリエーションが強みだ

小売りも販売環境変化

 青果卸・東京シティ青果の野菜第3部・福田雄二課長代理は「スーパーではかつて、大玉系とミニ系の売り上げ構成が7対3だった。それが現在は半々となり、逆転する店もある」と、販売環境の変化を分析する。

 一方で、「トマトはトレンドが出尽くし、需要の伸びしろを見いだしづらいのも事実」と指摘。スーパーは1パック198円、298円など、規格ごとに価格帯を固めており、品質で付加価値を訴求しても店頭価格に反映させるのは簡単ではない。

 高単価での販売が難しい中で生産者所得を確保する鍵として、福田課長代理は収量アップを挙げる。「品質を訴求するだけでなく、収量をしっかりと確保して価格面を補う発想も必要だ」と提起する。