産地事例紹介(大分県)

2022.12.02
JAおおいた豊肥事業部トマト部会

手持ち設備で環境制御を実践

投資抑えながら増収

 JAおおいた豊肥事業部トマト部会の有志は、加温・保温資材を使った夏秋作型の環境制御で増収につなげている。既存の設備・資材をフル活用して10㌃当たり30㌧取りを目指す。

 同部会は、74戸が標高300~700㍍で夏秋トマト約22㌶を栽培する。3月中・下旬に定植し、5月20日ごろに収穫を開始。霜が降りる11月下旬まで出荷と、加温して翌年1月末まで出荷の2作型が主力だ。2022年度は、部会全体で10㌃当たり12㌧取りを目標に、樹上で熟して収穫するトップブランド「赤採りトマト」300㌧を含む販売量3000㌧、販売額9億円を目指す。

 環境制御は、同部会青年部の7人が取り組む。46㌃でトマトを栽培する竹田市の原秀彰さん(39)は21年に連棟ハウスの一部で環境制御を導入し、10㌃当たり23㌧取りを達成した。経営全体で同平均17㌧取りと過去最高を1㌧上回った。22年度も猛暑、長雨、台風と苦労したが、「昨年並みを維持できた」と、高値で推移する10月も出荷量を確保できた。

 県やコンサルタント、JAの協力で取り組む環境制御は①保温用の内張りカーテンと遮光剤で光量を調節②加温機で株元換気③たっぷりのかん水④早めの摘葉――がポイント。カーテンは、定植時から日中は展張し、夜は閉じる。遮光剤と合わせて光を抑え、初期生育を促す。収穫開始後もカーテンで光を抑える。
株元換気は、加温ダクトで送風する。カーテン+遮光剤、株元換気で連棟ハウスは外気より2、3度低くなるという。

保温用の内張りカーテンでハウス内の光量を制御する

環境と生育を“見える化”

 管理で大きく変えたのは、かん水量と摘葉。「以前の1・5倍ほどにかん水を増やした。それでも気温が高い今年は、水やりが追いつかなかった」とみる。摘葉は、収穫する段の上までの葉を早めに除去する。

 原さんは、10年以上前に導入した環境モニタリングシステムでハウス内を観察する。毎週、茎の長さや太さなどを記録し、環境と生育の相関性を“見える化”する。「ようやく数値を見て、どう管理するか分かった」と笑う。データや課題は月1回の勉強会で共有し、さらに改善につなげる。

 遮光剤や送風の電気代は必要だが、初期投資はほぼかからなかった。「冬の設備が夏の管理に使えるとは思わなかった」と原さん。「10㌃26㌧取ったメンバーもいて、伸びしろはある」と、カーテンの自動化や日射比例かん水など投資を見極め、30㌧取りを目指す。

 環境制御の取り組みをサポートする部会長の後藤敬三さん(61)は「今までの考え方と真逆で戸惑うが、『赤採りトマト』はうま味が増え、酸味とこくのバランスが良い。10月も木が疲れず、しっかり量が取れている」と喜ぶ。

 部会全体でデータを共有し、できることから改善を進める。新規就農や親元就農で若手も増え、「若い人が楽しくトマトづくりができるのが大事」と、青年部の活動を歓迎する。

毎週、生育を確認し、ハウス内環境データを基に生育を“見える化”する
トップブランドの「赤採りトマト」は、1玉ずつ念入りに品質をチェックする
株元換気で、暑さをやわらげる