夏場のミニ主力産地 就農者、出荷量右肩上がり

2022.12.02
北海道・JAふらの ミニトマト部会

 夏場のミニトマトの主力産地である北海道。JAふらのミニトマト部会は、この10年で部会員が30戸増え、道内では2番手のミニトマト産地に急成長した。毎年、新規就農者も着実に増え、その食味の良さから市場からの信頼も厚い。

「部会は若手が多いので柔軟性があります」という鳥羽部会長 (撮影のためマスクを外しています)

10年間で栽培面積、売り上げ1.7倍

 「部会員の平均年齢? 50歳くらいかな。新規就農者も多いし、20~30代の若手も増えています」

 JAふらのミニトマト部会の部会長、鳥羽光生さん(50)はそう笑う。部会長歴5年だが、自身も静岡県出身で30代からの新規就農組だ。

 同部会は2021年現在で、部会員82戸、栽培面積35.8㌶。それぞれ10年前に比べ、30戸、14.6㌶増えた。出荷量は1377㌧、売り上げ10億4641万円。こちらも10年前より366㌧増、4億3565万円増と大きく伸ばした。今年産出荷量は1500㌧を見込む。ふらの管内の果菜類ではトップの地位を占め、右肩上がりの好調を維持する。

 新規就農者は毎年1、2人ずつあり、産地の力を底上げしている。その背景には、行政側のミニトマトへの誘導策がある。富良野市は、16年にJAふらのなど市内の農業関係団体で「富良野市農業担い手育成機構」を設立。ミニトマトとメロンの新規就農者を募る。希望者は3年間、農家での実習や実際の就農地での実地研修ができる。住宅や資金の支援、就農地の事前確保などの施策も手厚い。

 ミニトマトの優位性は、初期投資が比較的少なく、需要が高いので経営的に安定すること。部会の栽培技術が向上し品質が上がり、JAの販売力を背景に単価も少しずつ上がっていること─などが挙げられる。そのため農外からの参入だけでなく、タマネギの育苗ハウスを利用してミニトマトを導入するなど、他品目から取り組む人も増えてきた。

糖酸度バランスが取れ食味が良い
出荷先は北海道外が6割を占める

全員が特栽農産物基準を満たす取り組み

 部会員全員が、特別栽培農産物ガイドラインの基準(北海道慣行基準の農薬ポイント5割減、化学肥料由来の窒素分5割減)を満たした栽培に取り組み、それを守らなければ出荷できない。

 現在、部会の生産物は6割が道外に出荷される。JAは18年から、選果機2系統と段ボールの製函(せいかん)機などを導入した。選別能力は1日当たり14.6㌧と以前の1.5倍が処理できるようになった。

ミニトマト選別施設では1日15トン近く処理できる

〝打てば響く産地〟目指す

 今、部会が力を入れているのが「秋需(あきじゅ)対策」だ。産地の出荷ピークは8月だが、この時期は単価も伸び悩む。そこで8月出荷を、9月出荷に後ろ倒しする取り組みを3年前から本格的に始めている。

 そのため、主枝の切り替え、6月以降の定植(ポット植え)などにより、9月以降も高品質なミニトマトを出荷できるようになった。

 鳥羽部会長はこれからの部会を「まずは秋需対策の強化。そして高品質の維持です。その上で、市場や消費地の意見や要望を吸い上げて強い部会にしていきたい。産地勝手じゃない、“打てば響く産地”を目指します」と意気込む。