若手育成へ「ねぎの学校」

2024.07.22
鳥取県・JA鳥取西部 白ねぎ部会
 鳥取県西部に位置する米子市など9市町村を管内とするJA鳥取西部は、多様な風土、標高差を生かして白ネギの周年出荷に取り組む。販売高は約18億円(2023年度)と、米穀に次ぐ販売実績を誇る。市場からの信用と信頼を積み重ね、西日本を代表するブランド産地としての地位を築いてきた同JA白ねぎ部会。担い手育成を強化するため本年度、新規就農者や若手後継者を対象とした「ねぎの学校」を開校した。

「仲間づくり」の場

 

 同部会では直近の5年間で15人の新規就農者を迎え、全員が部会員として専業の白ネギ農家になっている。県農業農村担い手育成機構やJAなどと連携し、部会員が“親方”となって指導する制度を設けたことが部会員増につながった。
「ねぎの学校」は就農後の技術向上と経営安定を目的に、部会員であれば誰でも入学できる。初年度は12人が入学。大半が新規就農者や若手後継者で年齢は30〜60代と幅広い。
1年を通して月1度のペースで開く授業は、座学で栽培や農業経営などを解説し、受講生の圃場(ほじょう)で実践的な管理を教える。
 6月の授業では、県西部農業改良普及所の改良普及員が座学で農薬の効果的な使用や散布時期を講義した。圃場では、学校の発案者で同部会若手の会代表でもある吉岡大輔さん(49)=写真下=と同部会役員を務める村田彰さん(42)が講師を務め、除草や土寄せのタイミング、暑さ対策、追肥などを具体的に指導した。「他の圃場を見ることも大切」と、授業では毎回、圃場を変え、改善点だけでなく根拠も伝える。
 10年前に実家の経営を継いだ直後は生産者の知り合いがおらず、栽培や圃場確保などに苦労した経験からJAに学校を提案した吉岡さん。同学校に仲間づくりの場として期待する。

受講生を圃場で指導する吉岡さん(右から2人目、鳥取県米子市で)

将来は学び直しにも

 甘味が強く、可食部の柔らかさが特徴の同部会の白ネギ。23年度の総作付面積は約232ha(春47、夏65、秋冬120)で178万箱(1箱3kg)を出荷した。品種は主に春は「龍まさり」「初夏扇」、夏は「初夏一文字」「大地の響き」、秋冬は「関羽一本太」「大河の轟き」など。海抜の低い弓浜半島の砂畑や干拓農地などに加え、夏は中国地方の最高峰である大山周辺で標高の高さを生かして栽培する。
 歴史ある産地も高齢化が課題。吉岡さんは「ブランド力を維持し、市場の評価を高めるには全体の品質を上げる必要がある。独り勝ちではなく、生産者が力を合わせて協力することが大切」と学校の狙いを話す。
 「ねぎの学校」1期生で就農3年目の勇英雄さん(37)は「先輩が技術を惜しみなく教えてくれ、手厚いサポートがありがたい」と取り組みを歓迎する。他県で働いていた勇さんが地元の米子市で就農を決めたのも、充実した研修制度や若手農家を応援する雰囲気の良さが大きかった。
 就農時の3aから1haまで拡大し、白ネギの専業農家として独り立ちした。「白ネギは単収が高く、価格変動が少ないので経営見通しが立てやすい。学校で高温対策などを学ぶことで安定出荷を実現し1.5haまで増やしたい」と意気込む勇さん。技術を身に付け、先輩生産者らと産地を支えていくつもりだ。
 部会員数は482人で、30年前と比べると3分の1に減少している。部会長の益田佳幸さん(68)は「機械化が進み、定植や収穫作業が楽になり、年をとっても働きやすくはなった。ただ、白ネギは収穫後に手間がかかり、作業の7割が出荷作業と言ってもいいほど」と話し、課題解決の一つとして学び合う「ねぎの学校」に期待する。
将来的には実践経験のある生産者が学び直せる場にもしたいと考える吉岡さん。「さまざまな栽培管理を知ることで判断の選択肢が増え、そのことがより良い経営につながる」と先を見据える。

甘味が強く柔らかさが特徴の白ネギ(鳥取県米子市で)