ネギ病害虫防除のポイント

2023.07.15

 近年、ネギ栽培においては毎年のように病害虫に関する注意報・特殊報が発令されている。ここでは、千葉県農林総合研究センターの横山とも子氏と塩田あづさ氏に、特に発病初期の防除が重要なべと病と、高温条件で被害が増加するネギアザミウマを中心にネギの病害虫対策について解説してもらった。

病害対策 べと病の防除

 春夏ネギの栽培で問題となる病害としては、黒斑病、葉枯病、さび病、べと病、黒腐菌核病、白絹病、萎凋(いちょう)病、軟腐病などが挙げられる。ここでは、特に発病初期の防除が重要なべと病について、その特徴と防除対策を紹介する。

病原菌

 本病は、Peronospora destructorというカビの感染により引き起こされる。病斑上に形成された分生子が風雨により飛散し、感染が広がる。罹病(りびょう)組織中に卵胞子ができ、次作の伝染源となる。卵胞子は、耐久性があり残渣(ざんさ)および土壌中で10年間程度生存できる。本菌は、ネギ以外にタマネギやニラなどのネギ属に感染するが、それ以外の植物には感染しない。

特徴

 本病に感染すると、発病当初には輪郭が明瞭ではない薄緑色の比較的大きな長卵形~楕円形の病斑が葉身上に形成される(=写真1)。病斑上には灰白色の菌糸が生え、肉眼でも観察でき、本病の診断のポイントとなる。病斑上の菌糸は次第に暗緑色~暗紫色に変わる。激発すると熱湯をかけられたように急激に葉が枯れ、大きな減収となる。

写真1 ネギ葉身上のべと病病斑

防除対策

 本病は、いったん感染が広がると、薬剤散布を行ってもなかなか止まらないため、発病前または発病初期から登録薬剤を散布することが最も重要な対策となる。千葉県の研究成果では、感染に好適な気象条件は「日平均気温が13~20度で、1日の日照時間が1時間以下かつ降水量4㍉以上」としており、発病前から薬剤散布を行う際の目安となる(=表)。病原菌はネギの仲間以外には感染しないので、連作を避けることも大切な対策である。

千葉県農林総合研究センター 病理昆虫研究室 主任上席研究員 横山とも子

害虫対策 ネギアザミウマの防除

 ネギ栽培において注意すべき害虫は、アザミウマ類、アブラムシ類、ネギハモグリバエ、ヨトウムシ類、ネキリムシ類などである。ネギの収量や品質を確保するにはこれら害虫の防除は重要である。害虫の発生は天候などの条件により毎年変動するので、適切な時期に防除対策を行えるように、害虫の生態をよく理解するとともに、地域の予察情報にも注意する。
 ここでは、アザミウマ類の中でもネギで特に被害が大きいネギアザミウマについて、生態と被害の特徴、有効な防除方法を説明する。

特徴

 ネギアザミウマの成虫は体長約1~1・6㍉、淡黄色~黒褐色(=写真2)、幼虫は透き通るような黄色である。4月ごろから発生し始め6~10月に多くなる。高温、乾燥した条件を好むので、夏季の降水量が少ない年は多発生しやすくなる。
 食害痕が縦長の白いかすり状になるのが特徴で(=写真3)、ネギハモグリバエ、ネギコガと似ているが、これらが太めのはっきりとした直線や点線であるのに対し、表面不規則なかすれた線であることで区別できる。

写真2 ネギアザミウマの成虫
写真3 ネギアザミウマの食害痕

防除対策

 ネギアザミウマは食害だけではなく、深刻な被害をもたらすネギえそ条斑病(アイリス黄斑ウイルス)のウイルスを媒介することがあるので、ネギアザミウマの早期発見・早期防除に努める。
 薬剤防除を行うときは同時期に多発生するネギハモグリバエとの同時防除が必要である。どちらも各種農薬に対する薬剤抵抗性が問題になっているので、IRACコードを参考にして異なる作用機構の農薬をローテーション散布することが重要である。また、定植前のセル成型苗、チェーンポット苗に行う登録のある殺虫剤の灌注(かんちゅう)処理は本虫の他、定植後のネギハモグリバエやネキリムシ類にも薬効が期待できる。

千葉県農林総合研究センター 病理昆虫研究室 室長 塩田あづさ