ネギの産地と言えば主産県上位がひしめく関東で、出荷量が増加傾向にある茨城県。特に、国産が品薄となる春夏ネギは、2022年産の出荷量が2万9700tと全国一を誇る。同県のJA岩井は春夏ネギを基幹作物としており、京浜地域の春夏ネギの3本に2本は同JA管内産といわれる。ブランド「岩ネギ」を取材した。
※「岩ネギ」は、実際は「◯」の中に「岩」で「マルイワネギ」と読む
40億円目指して
春・夏・秋冬ネギで国の野菜指定産地を受けるJA岩井管内。品質や安全性など、県の厳しい基準をクリアした「茨城県青果物銘柄産地」として、4月中旬の初夏ネギの出荷を皮切りに、夏ネギ、秋冬ネギ、翌年の春ネギまで周年途切れることがない。
約300人のネギ生産者がJAに出荷するブランドネギが、「岩ネギ」だ。23年度(23年2月~24年1月)の目標は、年間300ha(うち春夏作245ha)、で220万ケース(1ケース5kg)を出荷、春・夏ネギで35億円、その他ネギで5億円と合わせて約40億円の売り上げを目指す。
供給の一角を担う責任産地として、生産意欲を高め品質向上の励みにしてきた対策の一つが、今年45回目となる圃場(ほじょう)と現物の審査で技術を競う立毛競作会だ。夏ネギの審査は、生産委員、農業改良普及センター、地元行政、JA職員などが務める。出荷最盛期の5~8月に審査し、四つある園芸部支部から毎月14点を本審査に上げ、月ごとの最優秀賞と県農水部長賞を選出。その後、審査結果を基にした次年度対策として冊子化され、全園芸部員に配布することで技術の平準化を図っている。
品種選定を重視
JA岩井園芸部会青年部の副部長を務める風見日出夫さん(45)。後継者として就農して11年目の中堅だ。坂東市で初夏・夏・秋冬ネギ1haと春・秋レタス1.5haを栽培する。
風見さん夫妻と両親で作業する。限られた労力で品質の高いネギを栽培するため、特に気を使うのが品種選定だ。作型ごとに年間8品種を小刻みに作り分け、合わせて新品種の試験導入にも余念がない。
作付けの基本は、溝切り機で掘った溝に、粒剤の殺虫剤を散布。その後、簡易移植機を引っ張ってチェーンポット苗を植える方法で夏・秋冬ネギを栽培する。
早い5月ごろに収穫する初夏ネギは、セルトレイ苗を手植えする。マルチを敷き、12月から3月中旬にトンネル被覆で栽培することで生育管理をしている。あらかじめマルチを敷いておくことで、簡易移植機よりは作業性を高めているという。
施肥設計では、窒素過多に注意する。以前は太く育てようと、土寄せのたびに追肥していたが、軟腐病が多発したため施肥設計を転換した。
悩ませるのが異常気象。風見さんは、「このところ雨がひどい。一度降ると2、3日水が引かない。今年は1カ月早めの作にしたが、6月初旬の異例の台風で予定が狂った」と肩を落とす。
安定相場に期待
風見さんが頼りにするのは、青年部の仲間や同JAだ。青年部は、品種や施肥防除などの課題を試験研究し、毎年2月に園芸部員や農業改良普及センターなどの関係者の前で成果発表する。地区ごとに成果を競うことで励みになる。青年部が園芸部を対象に開く基礎講座も基本を見直す機会になり参考になるという。
同JAは、20年12月に野菜予冷センターを新設した。真空予冷設備6基と保冷庫3室(総面積550平方m)を備え、2カ所あった集荷施設をこの新設備へ一本化。一元集荷一元販売により、部会員の品質統一を図ると同時に、部会員が育てた高品質のネギを周年で供給店頭まで届けることで有利販売につなげている。風見さんは「ネギは売り場には必ず必要な野菜。相場も安定している。ネギをメインに作り続けたい」と、やりがいを感じている。