主な秋冬作型向け 品種選びと最新動向

2023.01.23
農研機構・野菜花き研究部門 野菜花き品種育成研究領域 露地野菜花き育種グループ 研究員 藤戸 聡史

 ネギを安定栽培する重要な要素として、栽培地の環境や栽培方法に最も適した品種を選ぶことがあげられる。

 ここでは、秋冬ネギの品種選びの参考に品種の特性(農研機構・野菜花き研究部門監修)を紹介する。

特性の評価については各社から提供いただいた評価値をもとに各社のカタログ、ホームページを参考にし、それぞれ農研機構 野菜花き研究部門が監修した。

 周年栽培が可能なネギは、通年で出荷されているが、ネギの旬は秋~冬であり、秋冬取り作型が根深ネギの主力となる。東京都中央卸売市場の2021年ネギ入荷実績によると、端境期で単価の高い春夏ネギに比べ、秋冬ネギの価格は低いが、出荷量は春夏ネギの約1・3倍になる。一般的に秋冬ネギ栽培は3~5月に播種(はしゅ)、初夏に定植し、11~翌2月に収穫する作型。本作型に使用される品種は年内出荷用とそれ以降の出荷用に大別される。それぞれの出荷時期に合わせたネギを栽培する上で求められる品種の特性としては、年内出荷用は生育初期が夏季にあたるため、耐暑性が要求される。それ以降の出荷用は出荷時期が厳寒期にあたるため、耐寒性や低温伸長性が要求される。それぞれの時期に適する千住群黒柄系品種、合黒系品種をもとにして多くの品種が育成され、産地ごとに特に必要な特性を踏まえて品種が選ばれている。近年は、ゲリラ豪雨や夏季の高温、季節外れの台風などの異常気象が続いていることから、高温による生育停滞からの回復の早さや病害抵抗性、葉身の長さや太さ、葉折れの多少なども考慮の上、栽培する品種を検討する必要がある。異常気象による影響をじかに受けるのは春夏取り作型だが、栽培時期の長い秋冬取り作型も注意が必要だ。

 秋冬取り作型の根深ネギは多くの品種が出されているが、最近新たに育成された品種は春夏取り作型用が多く、秋冬取り作型用は少ない。一方で、秋冬取り作型において品種の特性に独自性を出すことによって、高収益性や省労力性をうたう品種が育成されている。短葉性ネギ品種や、葉ネギと根深ネギの中間のネギ品種が民間種苗会社のみならず国立研究開発法人や公設の試験場でも育成されているが、これらは葉鞘(ようしょう)が短いために土寄せ回数を減らせることから省力栽培が可能となる。また、葉鞘の肥大が旺盛である品種は早取りが可能なため、秋冬だけではなく夏秋に収穫可能な品種も出されている。今後の秋冬取り作型のネギ品種について、生産コストの削減や付加価値による単価向上などが可能となる品種育成が期待される。