「白神ねぎ」JAあきた白神

2023.01.23
JAあきた白神 ねぎ部会長 大塚 和浩さん(61)

 東北を代表するネギ産地である秋田県能代山本地域。この地で誕生したブランド「白神ねぎ」は、周年で栽培され、全国の市場から高品質ネギとして評価されている。昨年から輸出事業にも取り組み、予想を上回る出荷計画を達成し海外からの需要も獲得した。

20億円突破へ 地域一丸で産地振興

 秋田県のJAあきた白神ねぎ部会は2023年度、ブランド「白神ねぎ」で21億円の販売を目標に掲げる。22年8月に甚大な豪雨被害に見舞われたが、生産者、JA、県、行政と三位一体となって安定生産を維持。23年度に20億円の大台を突破し、5年後に25億円を目指す。

 同部会は180人が春ネギ11㌶、夏ネギ88㌶、秋冬ネギ107㌶、秋冬ネギを掘り上げて、束ねてビニールハウス内で囲う囲いネギと、露地に植え戻して雪中で貯蔵する雪中ネギが18㌶の計224㌶で「白神ねぎ」を栽培する。22年度は18億円の販売を見込む。

 産地振興を担うのが、13年度に生産者と行政、JAが立ち上げた10億円販売達成プロジェクトチームだ。3年ほど販売9億円台が続いたが、プロジェクトでは作付け拡大、販売単価の向上・維持、営農指導の強化を柱に活動。部会長を務める能代市の大塚和浩さん(61)は「全員が本気になった」と、15年度に10億円を突破した。18年度からは目標を20億円に掲げ、産地振興を進めた。

産地拡大へ意気込む大塚部会長

高位平準化で安定販売

 週1回、部会役員らが実施する抜き打ち検査が好調な販売を下支えする。検査で問題があれば、レッドカード、イエローカード、注意を出し、必要に応じで指導。レッドカードになると、「白神ねぎ」では販売できない。

 10以上の市場へ出荷するが、品質の高いネギの出荷で、どの市場も引き合いが強く価格が安定している。プロジェクトチーム発足から10年で作付面積は2倍となったが、同JA営農企画課の佐藤重樹課長補佐は「作っても売れる安心感が生産を後押しする」と、品質の高さが好循環を生み出していると説明する。

雪の中から掘り起こして収穫する雪中ネギ

世界品質で地域を豊かに

 同部会がある能代山本地域は、世界自然遺産の白神山地から流れるミネラル豊富な水と畑地が広がる。1~3月は、県の測定で糖度13を記録した囲いネギを「白神雪中ねぎ」の名で出荷。春ネギ、主力の夏ネギ、秋冬ネギにつなげ、ほぼ周年出荷で産地の信頼度を高めた。昨年は、県の取り組みで夏ネギを試験的に台湾へ輸出。高単価だが、引き合いが強く、出荷計画は4回だったが、秋冬ネギを含め、昨年末までに10回以上輸出した。

雪中ネギの出荷作業

 昨年8月の豪雨災害では、県全体で農作物や農業施設など農業被害が9億7000万円を超えた。「40年以上ネギを作っていて最大の被害」(大塚さん)だったが、JAの要請で、行政が必要な支援策を打ち出したことが素早い復興への原動力となった。ネギ栽培は法人化で雇用創出にも貢献する。大塚さんは「地域全体で30億円産地にしたい。農地もあり人もいて、力は十分にある。ネギで外からお金を稼ぎ、地域を豊かにしたい」と展望する。