㈱ヒロファーム
2月に日本野菜ソムリエ協会が開いた「第1回全国いちご選手権」で埼玉県が育成した新品種「あまりん(品種名=埼園い3号)」が最高金賞を受賞した。各産地が品種の特性を生かした生産・販売を展開する中、新品種の登場でイチゴ市場が活気づく。
63品がエントリー
最高金賞の「あまりん」を出品したのは、埼玉県春日部市にある観光イチゴ園「ヒロファーム」。「あまりん」は、同県がオリジナル品種「かおりん」とともに交配選抜し、16年、品種登録に申請した。名付け親は、秩父市の観光大使でもある林家たい平師匠だ。
全国いちご選手権は、全国から63品のエントリーがあり、野菜ソムリエやバイヤーによる30人の審査員が評価した。商品名、産地、生産者情報などは伏せ、食味を相対評価して合計点で賞を決定。最高金賞の「あまりん」は、審査員評では「豊かな甘味と香りが一口目から押し寄せ、ただ甘いだけでなくおしゃれなおいしさを感じた」「ジューシーだが柔らかすぎない」と絶賛された。
ブランド力高める
ヒロファームでは、「あまりん」を、直売所用にのみ栽培する。社長の中村知由さん(40)は「最高金賞受賞で分かる通り、食味はとても良い。ただ多収品種ではないので、高単価で売りたい。イチゴ狩り用にはしない」と線を引く。今年初めには、都内の高級果実専門店で15粒1万円以上の値をつけた。ブランド力の維持には気を遣う。
「『あまりん』は、偏差値自体が高い品種だ」と中村さん。能力を最大限引き出すため、高設栽培で土耕に負けない味を出す実証に取り組む。最も重視するのが光合成だ。養液と排液を分析し、生育を細かく管理。収穫は開花後、積算温度600度が適期だが、収量と味のバランスを見て経営的に判断する。
経営に生かす
「あまりん」をブランドとして売り込むが、ヒロファームの主体はイチゴ狩り。イチゴ園は、1月2日から6月30日まで開園し、1万6000〜2万人を集める。イチゴ狩りには「紅ほっぺ」「かおり野」「あまおとめ」「よつぼし」「ハッピー」(オリジナル)の5品種をメインに提供する。
コロナ禍では衛生対策に万全を払い、一時期を除き営業を継続。余ってしまうイチゴは、PR活動と割り切り、市内の病院や老人ホーム、障がい者施設に無償配布した。入居者やスタッフに喜ばれ、今ではリピーターになってくれたという。
ブランド力を高め、埼玉のイチゴを盛り上げたいと意気込む中村さん。「ライバルはディズニーランド。お客様に満足いただくため、私たちは値段以上の価値を出さないといけない」。