産地戦略品目「イチゴ」 期待の新品種・ブランド続々

2023.02.09

 世界各国で食べられているイチゴ。農水省によると、国内にあるイチゴ品種は約300種で、世界全体の品種の半分以上が日本という説もある。2000年代から各県は産地戦略品目にイチゴを掲げ、オリジナル品種の育成で、ブランドを確立してきた。特徴のあるイチゴが増え、生食での消費量は日本が世界一だとも言われている。平成の終わりからは、品種の世代交代も進み、次世代を担う期待の品種が次々と登場する。

栃木 4年後は8割計画 転換進む「とちあいか」

 生産量日本一の栃木県は、主力品種「とちおとめ」から品種登録出願中の「とちあいか」へ転換を進める。「とちあいか」は、10㌃当たり収量が「とちおとめ」の1・3倍。県全体でイチゴの作付面積を維持しながら、2027年には、「とちあいか」の作付けを8割まで増やす計画だ。
 「とちあいか」は、果形がハート型で赤みが強い鮮赤色。果実は硬いが、果汁に富み、「とちおとめ」より糖度が高く、酸度はやや低い良食味。萎黄病の耐病性があり、収量性の他、作りやすさの点でも産地にとって期待の高い品種だ。
 「とちおとめ」は、県外での栽培を認め、全国で生産されているイチゴの3割を占める。「とちあいか」は、県内生産に限定することで、イチゴ王国・栃木のブランドを強固にする。

断面がハート形の「とちあいか」
(栃木県提供)

愛知 新品種本格デビュー きらりと光る「愛きらり」

 2021年産は、作付面積が254㌶で全国第6位の愛知県は今シーズン、新品種ブランド「愛きらり」をデビューさせた。
 県農業総合試験場とJAあいち経済連が共同育成。「愛きらり」は、JAあいち経済連が商標登録したブランド名だ。
 果実は、大果で安定した高い糖度と、名前の通りきらりと光るつやが特徴。多収で栽培前半の収量も安定して確保でき、月ごとの収量変動が少なく、収穫・パック詰めなど出荷作業が平準化しやすい。
 2022年には、「愛知県いちご新品種ブランド化推進協議会」を設立。小売店バイヤーや消費者への認知度を高めながら、ブランド確立を図る。

愛知県とJAあいち経済連が育成した
「愛きらり」(JAあいち経済連提供)

福島 20年ぶりに新品種 公募で命名「ゆうやけベリー」

 福島県は約20年ぶりにイチゴの新品種「ゆうやけベリー」の本格販売を始めた。甘味と香りが強く、ジューシー感がある。外観は、やや橙色がかった鮮やかな赤色で大粒なのが特徴だ。
 良食味で人気の高い「とちおとめ」と、炭疽(たんそ)病に強く、収量性が良い「かおり野」を交配して育成。収量性の良さ、作りやすさに加え、全国約1万7700点の応募から決めた名称で、愛される県ブランドとして育てていく。

約20年ぶりに登場した新顔
「ゆうやけベリー」(福島県提供)

佐賀 東京・表参道で催し ファン増やす「いちごさん」

 続々と新顔が登場する中、確実にファンを増やしている佐賀県オリジナル品種「いちごさん」。3月15日まで東京・表参道で「いちごさんどう 2023」が開かれ、カフェ・レストラン8店舗がコラボレーションし、「いちごさん」を使用した「いちごさんど」メニューを提供する。2年続けての開催で、各店舗こだわりメニューを強化して、「いちごさん」をアピールする。
 「いちごさん」は、全国でも多く作られてきた「さがほのか」の後継として、イチゴらしいイチゴを作ろうと、7年かけて1万5000の試験株から選抜・育成した。中まで真っ赤なきれいな果形で、華やかな香り、ジューシーで、甘味と酸味がバランスよく口の中に広がり、2018年秋のデビュー以来、確実にファンを増やしている。

「いちごさんどう」で提供される
「いちごさん」
メニュー(佐賀県提供)