イチゴ栽培における病害虫防除のポイント
(次作に備えて)

2023.02.09

 イチゴには多くの種類の病害虫が発生し、安定生産上の大きな阻害要因となっている。高品質なイチゴを生産するためには病害虫の発生を防ぐことが重要だ。
 春期のイチゴ栽培は、本作の収穫作業に加え、次作の育苗に向けた親株の育成時期と重なる。同時期に作業するので、本作で発生した病害虫を次作に持ち越さない対策も必要である。

病害の防除対策

 本作での炭疽(たんそ)病や萎黄病の発病株は見つけ次第取り除く。除去株は肥料袋等に詰め、空気の排出口をしっかり閉じて、日当たりの良い野外においた後(嫌気的発酵後)に処分する。また、次作の作付け前には土壌消毒を行う(ネグサレセンチュウにも有効)。

炭疽病

 本病は、潜在感染した親株、罹病(りびょう)残さとともに土中に残った病原菌が伝染源となる。発病株は見つけ次第取り除き、肥料袋などに詰め、空気の排出口をしっかり閉じて、日当たりの良い野外においた後に処分する(嫌気的発酵処理)。
 前年に発生した親株床や仮植床を使用する場合は、病原菌が土中に残っている可能性があり、土壌消毒を実施する。胞子が雨やかん水のしぶきに混じって飛散し、伝染するので、雨よけを行うとともに、できるだけ水の跳ね返りがないかん水を心がける。発病してからの防除は困難なので、発病前から予防散布を行う。

萎黄病

 本病の厚膜胞子は土壌中で4、5年以上生存し、根からイチゴ株に侵入し発病する。また、感染した親株を使用するとランナーを通して小苗に感染するので、発病株は見つけ次第取り除き、圃場(ほじょう)外で嫌気的発酵処理後に適切に処分する。親株は無病地から選別した株を用い、土壌消毒を行った無病地に植える。

萎黄病の発病状況

害虫の防除対策

 一般に、害虫類の防除は、発生初期を見逃さず、防除を行うことが基本である。栽培終了後は、施設内で発生した害虫が周辺に拡散するのを防ぐため、施設を蒸し込むことで害虫を死滅させ、その後早めに適切に処分する。

ハダニ類

 本作で発生したハダニ類が親株床に移って発生するのを防ぐため、親株の管理作業は本圃(ほんぽ)作業の前、もしくは別の日に行う。
 日頃から圃場(ほじょう)をよく観察し、発生を確認したら薬剤を散布する。また、薬剤散布では、古い下葉を適宜取り除き、生息場所の葉裏に薬剤がよくかかるよう丁寧に行う。
 化学合成農薬に対する感受性が低下しているため、気門封鎖剤や天敵のカブリダニ類を利用する。カブリダニ類を利用する場合は、放飼前にハダニ類の密度が高くならないよう注意し、必要に応じて天敵に対して影響の少ない薬剤を散布する。

天敵製剤(カブリダニ類)の使用

アブラムシ類

 施設栽培では、施設の開口部に防虫ネット等を張り、有翅(ゆうし)アブラムシ類の侵入を防ぐ。発生が見られたら、薬剤を葉裏によくかかるように丁寧に散布する。

葉裏に生息するアブラムシ類

おわりに

 イチゴは栽培期間が長く、病害虫の化学農薬に対する抵抗性が発達しやすい。薬剤感受性の低下を防ぐとともに、病害虫防除の環境負荷低減のためにもさまざまな防除法を組み合わせた総合的病害虫・雑草管理(IPM)の取り組みが必要である。
 病害虫の発生や防除については、病害虫防除所の病害虫発生予察情報を確認するとともに、圃場をよく見回り、病害虫の発生状況を把握した上で、発生実態に応じた防除が重要だ。

栃木県農業試験場 研究開発部 野沢英之 病理昆虫研究室長