高い経営者意識 市場に信頼される産地に

2023.02.09
JAふじ伊豆 伊豆の国苺委員会

 イチゴ生産量で栃木、福岡、熊本を猛追する静岡県。伊豆の国市を管内とするJAふじ伊豆の「伊豆の国苺(いちご)委員会」は、イチゴの主力産地だ。昨年2月には、第51回日本農業賞集団組織の部で大賞に輝いた。新規就農者の確保・育成、会員生産者の技術水準の底上げ、厳格な選別・検査・包装による産地評価の向上─などが評価された。切れ間なくイチゴ生産のプロを育て続ける同産地に聞いた。

秀品率99・5% 主婦の目で厳しく検査

 JAふじ伊豆は2022年4月、県東部の8JAが合併、旧6JA管内でイチゴを生産する。伊豆の国苺委員会は、会員生産者数136人、22年度の栽培面積は28・3㌶、販売金額は17億4000万円。主力ブランドの「紅ほっぺ」を中心に、評価が高い大粒の「きらぴ香」も増え始めた。
 昨年12月に開かれた第33回静岡県いちご果実品評会では、最高位の農水大臣賞以下3位までを同JAの生産者が占め、高い技術力を示した。
 中心となる韮山地区には、100戸を超す会員生産者が集中し、高品質なイチゴを安定生産、厳しい共選共販体制を敷き、市場から高い信頼を得ている。その秀品率は99・5%だ。
 同委員長の飯田寿夫さん(67)は「検査するのは雇用した地域の主婦。買う立場で、店頭に並んだ商品としてチェックする。農家の『この程度なら』というものでも容赦なくはねる」と厳しさは折り紙付きだ。
 検査をする韮山野菜集出荷場は、販売担当職員2人、検査員は常時6人、仕分け担当者3人の体制だ。

集出荷場では厳しく検査

包装施設・親株増殖施設 生産への手厚い後方支援

 調製作業に多くの労力を取られるイチゴ生産を下支えするのが、05年にJAが開設した「苺パッケージセンター」だ。現在、会員の4割強が利用する。
 会員が収穫コンテナで持ち込んだイチゴを、作業員が分業でパック詰め、箱入れする。作業員60人体制で、ローテーションで休みを取りながら常時33人が作業する。
 通常パックの他、贈答用、ケーキなどの業務トレーなど、20近くの規格をこなす。高品質なイチゴ生産に加え、市場が欲しい量、規格など多様なニーズに応えることで評価を得ている。
 生産面では、JAが10年に建設した「苺親株増殖施設」が産地を支える。委員会とJAが親株の増殖や病害防除などを共同で行い、会員に健全な親株を供給している。

さまざまな規格や荷姿に対応する「パッケージセンター」

整う新規就農者支援 経営者集団の産地に

 産地の大きな特色が、新規就農者(ニューファーマー)の定着育成支援だ。04年の新規就農者研修を皮切りに、地区外から22戸のニューファーマーが定着した。委員会と県・市、JAが連携した「伊豆の国ニューファーマー地域連絡会」が、研修の受け入れから農地の斡旋、就農後のサポートまで面倒を見る。
 現在、初代の研修受け入れ先農家が60代半ば。そこで学んだニューファーマーが50歳前後。そして、ニューファーマーらが新たな研修生を受け入れる。そんな好循環ができ上がった。
 20年度は、会員数の16%に当たるニューファーマーが、栽培面積の21%、総販売額では3割弱を担う。
 飯田さんは「ニューファーマーは異業種から、農業を収益が上がる産業として選択して来ている。経営者意識も強い。そういうプロの集団として、産地づくりをしていきたい」と意気込む。

飯田委員長とJAの塩谷課長補佐(左)。日本農業賞のトロフィーの前で。(撮影のためマスクを外しています)
「プロ集団の産地に」と語る飯田委員長