JA全農の取り組み〜ザルビオ®フィールドマネージャー

2024.02.19
JA全農 耕種総合対策部 スマート農業推進課

栽培管理支援システム「ザルビオ®フィールドマネージャー」

防除の効率化を実現実証で成果続々と

 ザルビオ®フィールドマネージャー(以下、ザルビオFM)は、品種、栽培方法、気象状況、人工衛星画像など、さまざまなデータをAI(人工知能)が解析し、施肥、防除などの作業適期を提案するシステムである。2023年12月時点で水稲、大豆、麦(小麦・大麦)を中心に一部露地栽培の園芸作物でも利用可能である。ザルビオFMはパソコンやスマートフォンで利用でき、主な機能は①作物の生育ステージ予測機能②病害アラート、大豆雑草管理プログラムや散布天気予報など防除を支援する機能③人工衛星画像による生育や地力状況の見える化と施肥マップ出力――の3機能である。ここでは防除対策に活用できる機能として、①②を紹介する。

「作物の生育ステージ予測」 防除の最適化に貢献

 水稲、大豆、麦で実装されている機能で、品種、天候などから作物の生育ステージの推移を予測する。ザルビオFMに品種や播種日/移植日を入力するとAIが栽培期間中の作物の生育ステージの予測を提示する。これにより、水稲であれば幼穂形成期や出穂期、麦においては開花期など防除重点時期を前もって予測できるため、防除計画を効率よく立てることができる。

AIで防除適期を高精度予測

 近年の水稲栽培では、夏場の曇天によっていもち病の発生が多く認められる地域が増え、また、毎年のように斑点米カメムシの対策も課題となっている。これら水稲病害虫の一般的な防除体系として、育苗箱処理剤による初期の防除に加え、出穂期とその7~10日後に本田防除を実施する基幹防除が推奨されている。しかし、近年の変動の大きい気象条件のもとでは、水稲の出穂期が平年値からずれることがしばしばあり、防除適期の把握には小まめな生育状況の観察が必要となり多大な労力がかかる。一方、ザルビオFMは1キロメッシュの高精細な気象予報データと品種特性を考慮したAI予測により、圃場(ほじょう)ごとに精度の高い予測が可能となる。ザルビオFMの生育予測機能を使うことで防除の最適化とスケジュール作成の効率化に役立つ。

「病害アラート、大豆雑草管理プログラムや散布天気予報など防除を支援する機能」コストや労力減らし、収量アップへ

 病害アラート機能は水稲の主要病害であるいもち病や紋枯病、麦の重要病害である赤かび病などの発生リスクを4日先まで予測する=図1。これにより、基幹防除時期以外の臨機防除にも対応しやすくなり、適期を逃さず防除が可能となる。23年度の佐賀県の水稲での実証試験では、慣行体系でいもち病、紋枯病対策剤が推奨される地域で、ザルビオがアラートを出したいもち病に絞り殺菌剤を散布することで慣行体系から薬剤コストを削減でき、収量も慣行体系と同等に得られた事例が確認されている。

図1.生育ステージ予測と病害アラート

収量8割増の事例も

 大豆では、最適な雑草防除体系を提示する雑草管理プログラム機能がある。ザルビオFMに当該圃場で問題となる雑草種や栽培条件を登録することにより、圃場ごとに最適な雑草防除体系が提示され、大豆の生育ステージに応じて適期に防除作業をアラートするものである。これにより雑草種に応じた最適な薬剤選択や最適なタイミングでの除草剤散布、中耕培土などの防除作業を効率よく行うことができる。22年度栃木県の圃場で雑草管理プログラムを活用した防除を実施したところ、例年慣行体系では除草剤を4回散布しても雑草被害を抑えられなかった圃場が除草剤2回散布で防除が完了し=図2=、除草コストを50%削減できた事例が確認されている。また、収穫前の草抜き作業が不要となり、圃場見回り回数も減るなど労力の低減にも繋がり、平均収量も前年比で約80%増加した。

図2.(左)雑草管理プログラム導入圃場(右)慣行圃場

散布最適時間帯も予報

 散布天気予報=図3=は通常の天気予報に加えて、薬剤散布に適した時間帯を示す機能である。1時間ごとの降水確率や風速をAIが分析し、日ごとに農薬散布に適した時間帯を示す。どの時刻に作業を行うと薬剤散布に影響が少ないかを判断するのに役立ち、効率的な防除計画を立てることができる。

 ザルビオFMの詳しい内容やご利用方法についてはホームページや問い合わせ先にご連絡ください。

図3.散布天気予報
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