茶の病害防除

2024.02.19
農研機構 植物防疫研究部門 果樹茶病害虫防除研究領域 果樹茶生物的防除グループ グループ長補佐 山田憲吾

栽培体系に合わせ防除を[病害]

 わが国で茶の栽培において防除が必要な病害の種類に、ここ数十年大きな変化はないが、最近は年によって気象の変動が大きく、また海外輸出や飲料原料、有機栽培などさまざまな需要に対応するために栽培体系が多様化している。このため、その年の天候や圃場(ほじょう)ごとの状況に合わせて適切な防除を行うことが、これまで以上に重要になっている。ここでは、主要病害の発生生態と防除対策のポイントについて解説する。

炭疽(たんそ)病

 開葉直後の若い葉に感染し、3、4週間の潜伏期間を経て赤褐色の大型壊死(えし)病斑を形成する。防除は開葉期に行う。摘採しない茶期や多発が予想されるときは約1、2週間後にもう一度薬剤を散布する。防除薬剤の多くは保護剤で、病原菌の感染前に散布する必要があるため、散布が遅れないようにする。DMI剤は病原菌の感染後の散布の効果が高く、遅めの散布が有効である。ただし、発病後の治癒効果はないので防除は発病前に行う。

炭疽病

輪斑病

 傷口から感染して葉枯・枝枯症状を引き起こす。葉では赤褐色で同心円状の輪紋がある病斑を形成する。茎では黒褐色に壊死する。防除は摘採・整枝の直後に行う。散布が早いほど防除効果も高くなる。摘採直後に防除ができないときは浅く整枝して病原菌の侵入部分を刈り落としてから薬剤を散布する。

新梢(しんしょう)枯死症

 輪斑病菌の新芽の基部のへ感染によって起こる症状で、上部への水分供給が絶たれて青枯れ状態となり、やがて枯死する。防除適期は炭疽病と同じで同時防除できるが、炭疽病に有効なDMI剤は、効果が無いか低いため、薬剤の選択に注意する。

新梢枯死症

赤焼病

 秋から春に発生して成葉や枝条に壊死病斑を形成する。秋期から発生し始め、春期に気温の上昇とともに急激に増加する。罹病(りびょう)葉は激しく落葉し、一番茶の減収を招く。防除時期は通常10月と2、3月であるが、それ以外の時期でも初発があったらすぐに防除を行う。冬期のマシン油散布によって発生が大きく増加するため、害虫防除にマシン油を使用するときは事前に銅剤を散布しておく。