水稲の雑草防除

2024.02.19
公益財団法人 日本植物調節剤研究協会 田中十城

適切な圃場管理が重要に

 水田雑草の種類は約200種ともいわれ多様であり、除草剤を適期に散布できないと枯れ残ったり、後から発生してきたりする。また、多くの水稲用除草剤は、湛水(たんすい)状態で散布され除草成分が田面水中を拡がることから、畑地での除草剤散布に比べ散布が容易で効果むらになりにくい半面、漏水などにより効果が変動しやすい。効果的な雑草防除には、水田雑草や除草剤に関する知識と適切な圃場(ほじょう)管理が必要である。

水田雑草の種類と特徴

 雑草は、繁殖方法により一年生雑草と多年生雑草とに大別される。

 一年生雑草は種子で繁殖する雑草(ノビエ、コナギなど)で、生産する種子の量は非常に多く、10年以上という調査結果があるほど土壌中での寿命も長い。中には、田面が露出すると発生してくる雑草(クサネム、タウコギなど)もある。これらの雑草が発生する田面が露出しやすい水深が浅い箇所は、除草剤が拡がりにくく雑草が残りやすいので丁寧な均平作業や水管理が必要だ。

 多年生雑草は、土壌中の塊茎や根茎などの繁殖体に栄養分を蓄え、翌年そこから芽を出す雑草である。マツバイ、ウリカワ、ミズガヤツリ、ヒルムシロ、セリ、オモダカ、クログワイなどがある。ホタルイは越冬する場合があるため多年生雑草に分類されているが、水田では種子からの発生が多く見られる。多年生雑草が作る塊茎は、一年生雑草の種子数に比べ少ないが、地下のやや深いところからの発生が可能であり、数個の芽を持つものもある。ただ、土壌中での寿命は1年から長くて数年と種子に比べて短い。

オモダカ
キカシグサ
クサネム
コナギ
ヒルムシロ
ホタルイ生育期(花茎伸長)

水稲用除草剤の種類

 水稲用除草剤は、一発処理剤、初期剤、中・後期剤に大別される。

 一発処理剤は、水田に発生する主要な一年生雑草、多年生雑草に効果が高く、効果の持続期間も長い。条件の良い水田で正しく使えば文字通り1回の処理で除草を済ませることができる。問題雑草と呼ばれるオモダカ、クログワイ、コウキヤガラ、シズイなどに対しては、後処理剤との体系処理を基本としている。だが最近では、体系処理と同等の効果が期待できる一発処理剤(問題雑草一発処理剤)も市販されており、除草剤の散布回数を減らすことに貢献できると期待されている。

 初期剤は、主に体系処理の前処理として田植え前後の時期に使用し、代かき後早い時期から発生してくる一年生雑草などを抑えることができる。ただし、効果の持続期間が比較的短いので後処理剤の準備が必要だ。 中・後期剤は、主に体系処理の後処理として使用し、前処理剤で防除できなかった草種、あるいは前処理剤の効果が切れて発生してきた草種を防除対象としている。散布器具を用いて落水状態で散布する剤もある。落水散布の後は、落水を維持するのか、あるいは湛水にするのかをラベルで確認して適切な水管理を行う。

除草剤の選定

 除草剤を散布し、残った雑草があった場合は、使用した除草剤名、散布時期、雑草名、発生量などの情報を記録しておき、次年度の除草剤選択の参考にするとよい。例えば、例年防除できていたコナギやホタルイなどが大量に残存していれば、SU抵抗性雑草の発生を疑い、それらに効果がある一発処理剤、あるいは体系処理に切り替えてみる。オモダカ、クログワイの問題残草が見られた場合は、有効な体系処理を計画するか、それらに対して体系処理と同等の効果を有する一発処理剤の散布を検討してみてはいかがだろう。

除草剤使用に当たっての留意点

 除草剤の使用前にまずラベルを読み、適用表と効果・薬害に関する注意事項を確認する。薬害発生に関係するので、植え付け精度や砂壌土水田での使用には留意する。また、気温が高く雑草の生育が早い年では雑草の限界葉期を越えないよう早めの散布に心がける。除草剤処理後7日間は特に水尻やモグラ穴などからの田面水の流出に注意し、かけ流しはしない。水持ちを良くするため耕起・代かきは丁寧に行い、水田の均平化を図り、畦畔(けいはん)は補修しておく。処理前後の適切な水管理は除草効果だけでなく除草剤が水田外へ流出するのを防止するためにも極めて大切なことである。