雑草防除 分かりやすく発信

2024.02.19
公益財団法人 日本植物調節剤研究協会 理事長 大谷 敏郎

 「みどりの食料システム戦略」では、化学農薬のリスク換算での使用量50%削減が2050年の達成目標とされている。当協会では、難防除雑草や特定外来生物(植物)の発生レベルを可能な限り低く維持することが、全体の使用量削減に最も重要なアプローチであると考えている。

難防除雑草の全国調査を実施

 当協会が行った全国の普及機関を対象としたアンケート調査の結果、外来種だけでなく、江戸時代の農業書に見られる多くの在来種も、効果のある剤の不足などにより、依然、除草が困難となっていること、地域においてそれら草種に特徴があることも明らかになった。

 これらの難防除雑草の除草には、通常、複数回の剤の散布が必要になり、剤の使用量が増加する他、適切な散布時期や剤の選択など、作業上の負担も多くなる。従って、難防除雑草の発生レベルを可能な限り低く維持する除草体系の確立が必要となる。 当協会では前述のアンケート調査でも明らかになったオモダカ、クログワイ、コウキヤガラなど水稲栽培で問題となる多年生広葉雑草、エゾノサヤヌカグサや畦畔から水田内に侵入して問題になるアシカキやキシュウスズメノヒエなど多年生イネ科雑草などに対する防除技術の開発を進めている。また、空き地や耕作放棄地、河川、湖沼などで大量発生し、農地への侵入や水路の閉塞などが問題となっており、国のプロジェクトでも防除技術の開発が進められている特定外来生物に指定されたアレチウリ、ナルトサワギク、ナガエツルノゲイトウなどについても研究課題に加えて取り組んでいる。ただ、これらの成果は生産現場で適切に利用されることが重要であり、使用されなければ開発の意義が失われる。

農薬取締法の改正と登録情報検索の実情

 18年に農薬取締法の改正で薬効薬害データに関する農薬登録要件が緩和され、例えば水稲用除草剤の除草効果や薬害について地域や作期、土壌条件などにおける詳細な検証が不要になり登録申請者は、短期間で、全国で使える登録を取得できるようになった。一方で、農家が実際に利用する際には、効果面や作物への安全性の面から、それぞれの地域や土壌の特性に合った使用法を選択することが必要な場合もある。ただ、生産現場で具体的に除草剤を選択する際、例えば難防除雑草を対象とする薬剤やその使用方法に関する情報を調べようと思っても、それら情報を技術資料やホームページにて、個別の草種名から網羅的に収集するのは容易ではない。

現場で利用しやすい薬剤情報の提供拡大

 このようなことから、これまで当協会にて行ってきた薬効薬害試験の結果、有効性が確認できた薬剤に関する情報を基に、雑草ごとの防除方法を農家や普及員の方々が簡易に検索することができるウェブアプリ「除草カタログ」=図=を開発した。まずは、前述のアンケートにおいて問題となっているとの回答の多かった10数種の雑草から試行版の公開を始め、関係者のご意見を伺いながら、徐々に草種を広げていく予定だ。

 当協会の大きな役割である、除草剤や植物成長調整剤の登録や普及に向けた薬効薬害試験、作物や水・土壌への残留試験、難防除雑草や将来問題化する可能性のある雑草の防除に関する研究開発事業に「除草カタログ」を加えることで、問題となる雑草の発生レベルを可能な限り抑え、みどり戦略の実現に貢献していきたいと考えている。

除草カタログ