雑草防除サイト年内公表へ

2023.02.20
公益財団法人 日本植物調節剤研究協会 理事長 大谷 敏郎

 当協会では、除草剤や植物成長調整剤の登録に向けた薬効薬害試験、作物や水・土壌への残留試験を大きな業務としている。広く問題となる難防除雑草や将来問題化する可能性のある雑草の防除に関する研究開発事業にも力を入れている。「みどりの食料システム戦略」で目指す、化学農薬のリスク換算での使用量50%削減に向けては、難防除雑草や特定外来生物(植物)発生レベルを可能な限り低く維持することが最も重要と考えている。

多年生雑草へ一発処理剤開発を提唱

 重点研究課題として、例えばオモダカ、クログワイ、コウキヤガラなど水稲栽培で問題となる多年生雑草に対して、問題雑草一発処理剤の開発を提唱・推進し、1回の処理で十分な効果を示す薬剤の開発、普及に貢献してきた。

 東北地域などで問題のシズイに対する一発処理も検討を行い、畦畔(けいはん)から本田に侵入するアシカキや切断茎から再生するエゾノサヤヌカグサなど多年生イネ科雑草に対する防除技術も研究を進めている。

生態的特性踏まえ効果的防除を試験

 近年、アレチウリ=写真①、ナルトサワギク、ナガエツルノゲイトウ=写真②=など特定外来生物に指定された侵略的外来植物が、空き地や耕作放棄地、河川、湖沼などで大量発生し大きな問題となっている。22年度の当協会の各種報告会でも、農地や農地周辺での発生が報告され、早急な防除対策の確立が望まれる。当協会では、有効除草剤の選抜試験を実施し、有望な剤について、特定外来植物が繁茂する現場において生態的特性を踏まえた効果的防除の確認試験を実施している。試験研究の成果を用い、各地域の特性に合わせて有効な除草剤や防除体系、処理時期などを細かく設定し推奨することで、各雑草を効果的に制御することが可能となり、地域内における発生量を低いレベルに維持することに貢献できる。

写真①=河川敷を覆い尽くすアレチウリ
写真②=倒伏した稲を覆うナガエツルノゲイトウ

生産現場で利用しやすい情報提供

 当協会では、全国の都道府県試験場の協力を得て、各地域での除草剤の最適な使用方法を詳細に検討し、水稲用除草剤は「技術指標原案」として会員ホームページ内で公表。農家や普及員を対象に、生産現場で利用しやすい形で情報を提供するため、これまで蓄積した多くの試験データを基に、雑草ごとに地域に適した防除方法を簡易に検索できるウェブサイトを、年内の公表を目指し作成中だ。

農薬と機械的除草を組み合わせ相乗効果

 最後に、「みどりの食料システム戦略」では、スマート除草機や除草ロボットを用いた機械的除草が有望な除草手段として紹介されているが、雑草の発生レベルが予め抑えられていると、機械除草の効率も飛躍的に向上する。除草剤を併用する機械除草が、結果として全体の農薬使用量の減少と除草効率の向上に貢献すると考える。水田や畑においても、組み合わせの相乗効果を狙った検討がされていくことを期待している。