水稲の害虫防除

2023.02.20
農研機構 植物防疫研究部門 作物病害虫防除研究領域 病害虫防除支援技術グループ グループ長補佐 平江雅宏

全国的に多発生か

 22年は、トビイロウンカの飛来が4月に初確認されるなど前年と同様、早い傾向であった。5月下旬から7月にも断続的な飛来と発生が認められ、愛知県、岐阜県、岡山県で注意報が発表された。斑点米カメムシ類は、6月下旬から7月始めに記録的な猛暑となるなど発生に好適な条件となり18道県から延べ22件の注意報が発表された。ヒメトビウンカが媒介するイネ縞葉枯病は茨城県から2件の注意報が発表された。

トビイロウンカ セジロウンカ

 日本では越冬が不可能で、毎年梅雨時期に中国南部などから下層ジェット気流に乗って国内の水田に飛来する。九州地域を中心として西日本で飛来が多い傾向にあるが、飛来時期・量・回数は年によって変動するため病害虫防除所などが発表する情報で飛来状況を把握し、その後の発生を注意する必要がある。

トビイロウンカ

箱施用剤に加え本田防除で万全に

 防除対策は、育苗箱施用剤の利用と本田殺虫剤散布があげられるが、一部殺虫剤に対し、感受性低下の事例が報告されているため、薬剤の選定には注意する。両種による被害が警戒される地域では、育苗箱施用剤による対策に加え、必要に応じ適期に本田防除を実施する。トビイロウンカ多飛来時は中・後期の基幹防除、臨機防除を徹底することが大切だ。本田防除の場合は、薬剤がウンカ類の生息場所である稲の株元まで十分かかるよう心がける。

斑点米カメムシ類

 水田畦畔や休耕田にあるイネ科雑草などで増殖し、稲の出穂とともに水田に侵入する。成虫や幼虫がもみから玄米の汁を吸うことによって、米粒の一部または全体が変色・変形する斑点米を発生させる。近年、全国的に多発生傾向が続き、発生地域では適切な防除対策を行う必要がある。東北や北陸地域ではクモヘリカメムシの分布域の拡大が懸念される。関東以西ではイネカメムシの発生が増加傾向にあり、本種によって登熟初期の穂が加害されると不(稔ふねん)粒が発生し減収する場合があり注意を要する。

イネカメムシ

雑草管理がポイント

 防除対策は水田周辺の雑草管理により増殖源でのカメムシの発生量を抑制することだ。農道や畦畔の雑草を稲の出穂1、2週間前までに刈り取り、出穂前後の期間中にイネ科雑草の穂が出ないよう管理することで、水田への侵入量を減らす。水田周辺だけでなく、水田内に雑草を生やさないよう適切に管理することも大切である。本田での薬剤防除は出穂後の殺虫剤散布が基本となる。一般に穂ぞろい期~出穂10日後に散布し、発生量が多い場合はその7~10日後に追加散布する。カメムシの種類や発生量、散布薬剤により適切な散布時期や散布回数に若干の違いがあるので、病害虫防除所などの情報、指導を参考にして防除する。

 

【キーワード】
▼不稔(ふねん) 受粉しても実らないこと。