水稲の雑草防除

2023.02.20
(公財)日本植物調節剤研究協会 田中十城

適期散布できるかが鍵

 水田雑草の種類は約200種とも言われ多様であり、除草剤を適期に散布できないと枯れ残ったり、後から発生したりする。多くの水稲用除草剤は、湛水(たんすい)状態で散布され、成分が田面水中を拡がるため、散布しやすく、効果むらになりにくい反面、漏水などにより効果が変動しやすい。効果的な雑草防除には水田雑草や除草剤に関する知識と適切な圃場(ほじょう)管理が必要である。

種子の寿命は10年超 塊茎で深くから発生

 雑草は、繁殖方法により一年生雑草と多年生雑草に大別される。

 一年生雑草は種子で繁殖する雑草(ノビエ、コナギなど)で、生産する種子の量は非常に多く、10年以上という調査結果があるほど土壌中での寿命も長い。田面が露出すると発生する雑草(クサネム、タウコギなど)もある。これらの雑草が発生する田面が露出しやすい水深が浅い箇所は、除草剤が拡がりにくく雑草が残りやすいので丁寧な均平作業や水管理が必要だ。

 多年生雑草は、土壌中の塊茎や根茎などの繁殖体に栄養分を蓄え、翌年そこから芽を出す雑草だ。マツバイ、ウリカワ、ミズガヤツリ、ヒルムシロ、セリ、オモダカ、クログワイなどがある。ホタルイは多年生雑草に分類されるが、水田では種子からの発生が多く見られる。多年生雑草が作る塊茎は、一年生雑草の種子数に比べ少ないが、地下のやや深いところからの発生が可能であり、数個の芽を持つものもある。土壌中での寿命は1年から長くて数年と種子に比べて短い。

コナギ
オモダカ

正しく水管理を行い 薬剤の効果引き出せ

 水稲用除草剤は、一発処理剤、初期剤、中・後期剤に大別される。一発処理剤は、水田に発生する主要な一年生雑草、多年生雑草に効果が高く、持続期間も長い。条件の良い水田で正しく使えば1回の処理で除草を済ませることができる。問題雑草と呼ばれるオモダカ、クログワイ、コウキヤガラ、シズイなどには、後処理剤との体系処理を基本としている。最近では、体系処理と同等の効果が期待できる一発処理剤(問題雑草一発処理剤)も市販され、散布回数を減らせると期待されている。

 初期剤は、主に体系処理の前処理として田植え前後の時期に使用し、代かき後に早い時期から発生する一年生雑草などを抑えることができる。効果の持続期間が比較的短いので後処理剤の準備が必要だ。

 中・後期剤は、主に体系処理の後処理として使用し、前処理剤で防除できなかった、または効果が切れて発生した草種を防除対象とする。散布器具を用いて落水状態で散布する剤もある。落水散布の後は、落水を維持するのか、あるいは湛水にするのか、ラベルで確認して適切な水管理を行う。

残草など記録し 次作の参考に

 除草剤を散布し、残草があった場合は、使用した除草剤名、散布時期、雑草名、発生量などの情報を記録し、次年度の除草剤選択の参考にする。例年防除できていたコナギやホタルイなどが大量に残存していれば、SU抵抗性雑草の発生を疑い、それらに効果がある一発処理剤、あるいは体系処理に切り替える。オモダカ、クログワイなどの問題雑草が見られた場合、あるいは問題雑草一発処理剤を計画してはいかがだろう。

ラベルは必ず確認

 除草剤の使用前にラベルを読み、適用表と効果・薬害に関する注意事項を確認する。気温が高く雑草の生育が速い年では限界葉期を越えないよう早めの散布を心がける。処理後の7日間は、特に水尻やモグラ穴などからの田面水の流出に注意し、掛け流しはしない、水持ちを良くするため耕起・代かきは丁寧に行い、水田の均平化をはかり、畦畔(けいはん)は補修しておく。処理前後の適切な水管理は除草効果だけでなく除草剤が水田外へ流出するのを防止するためにも極めて大切である。