茶の病害防除

2023.02.20
農研機構 植物防疫研究部門 果樹茶病害虫防除研究領域 果樹茶生物的防除グループ 上級研究員 山田憲吾

栽培体系や天候考慮

 近年は気象の年次変動が激しく、茶の病害の発生状況も年によって大きく異なることが増えた。輸出への対応や省力・低コスト化、多収化などを目的として、栽培・防除体系の多様化が進む。天候や茶園の状況に合わせた防除を行うことが重要である。

炭そ病

 全国的に広く発生する茶の最重要病害。病原菌は開葉期に感染して新葉に赤褐色の壊死(えし)病斑を形成、落葉と樹勢の低下を招く。発生は天候に大きく左右され、新芽生育期に降雨が多いと多発する。防除は各茶期の0.5~1葉期に行う。摘採しない茶期や多発が予想される時は1、2週間後にもう1回薬剤散布する。薬剤の多くは保護剤で、病原菌の感染前に散布する。DMI剤は治療効果が高く遅めの散布が効果的だが、発病葉を回復させる作用はないため、散布は発病前に行う。

炭そ病

輪斑病

 摘採などによる葉の傷口に、同心円状の病斑を形成する。枝では、切断面から下部が黒褐色に壊死する。防除は摘採直後に行う。時間の経過とともに防除効果が急速に低下するため、適期に防除できない時は、浅く整枝して病原菌の侵入した部分を刈り落としてから薬剤を散布する。新芽が輪斑病菌に感染して起こる新梢枯死症には、新芽生育期に薬剤散布する。QoI剤は防除効果が高いが、耐性菌が確認されているため、使用は年1回以内とし、耐性菌が発生している地域では他系統の薬剤を使用する。

赤焼病

 寒冷期に発生し、越冬葉や茎に紫褐色で円形~不定形の病斑を形成して落葉や枝枯れを引き起こす。特に幼木で発生が多い。最盛期は早春期であるが、秋期から発生が始まると翌春の発生の伝染源となり多発を招く。感染に好適な条件下では、一番茶や二番茶の茎葉に発生することもある。防除時期は、晩秋期および早春期とされるが、発生消長が年により大きく異なるため、初発を確認したらすぐに防除を行う。

赤焼病

 

【キーワード】
▼DMI剤
 病原菌の細胞膜に作用して殺菌効果を発揮する。
▼QoI剤
 糸状菌の細胞の中にあるミトコンドリアに作用して殺菌効果を発揮。