果樹の病害防除

2023.02.20
農研機構 植物防疫研究部門 果樹茶病害虫防除研究領域 果樹茶病害虫生物的防除グループ長補佐 須崎浩一

衛生保ち効果アップ

 2022年は関東以西で気温の高い日が続く一方、北日本では前線が停滞し記録的な大雨となり、一部地域では河川の氾濫(はんらん)による果樹の冠水被害もあった。果樹の病害には雨で広がるものが多い。防除には気象情報を活用し、安定した防除効果を得るため圃場(ほじょう)衛生の維持に努め伝染源密度を低く抑えることが重要である。

薬剤散布は春先から

 ここ数年問題の黒星病は、新たな防除体系への移行が進み、発生は落ち着きつつある。主産地の東北地方では夏期の降雨量が多く褐斑病の発生が目立った。伝染源は降雨とともに飛散し、温暖、多湿な条件で発病しやすいため夏期に降雨の多い条件で被害が多い。感染は4月下旬頃から始まるので春先から定期的な薬剤散布を行う。

 黒星病は6月に2県で注意報が出された。前年の被害落葉上に形成された胞子が降雨とともに飛散し感染が始まる。重点防除時期は開花直後から落花期で、その後も定期的な薬剤散布が必要である。芽基部りん片の病斑も翌春の伝染源となるので芽への感染を防ぐために収穫後の防除も行う。

落葉は土にすき込む

 防除薬剤にDMI剤の効果が高いが、耐性菌発達を抑えるため使用回数を守る。薬剤散布以外の対策に、落葉は最も重要な伝染源なのでロータリーで土にすき込む。

 せん孔細菌病は1県で伝染源密度の高い状態が続いたことと、春先に多雨が予想されたことから注意報が出された。病原細菌は、枝で越冬し、春型枝病斑を形成する。病原細菌は春型枝病斑から風雨によって分散し感染を拡大する。本病には現在無機銅剤と抗生物質が登録されているが使用時期や回数に制限がある。

早めの袋かけ有効

 防除の基本は、開花直前の無機銅剤散布で初期感染を防ぎ、以降は春型枝病斑や罹病(りびょう)葉・果実を見つけ次第徹底して除去する。果実の被害を防ぐには早めの袋かけが有効である。

ブドウ

 注意報は出されなかったものの、べと病、晩腐病は、入梅前に注意喚起がなされた。べと病は降雨によって発病が助長される。薬剤防除は落花直後が重点防除時期となるが、雨が続くと一気に病気が広がるので、降雨前に予防的に散布を行う。耕種的な対策として余分な枝を除き通風を良くするとともに被害落葉を園外に取り除く。可能な場合には雨よけ栽培を行う。

ブドウべと病 
ブドウ晩腐病

伝染源は雨水で拡大

 晩腐病は幼果期から感染が始まるがすぐに発病せず収穫近くに果実糖度が上昇すると急速に腐敗を引き起こす。

 伝染源は5月ごろから収穫期まで飛散するため生育期全般にわたった薬剤散布が必要である。本病も薬剤散布と耕種的手法の組み合わせで対策に当たる。伝染源は雨水とともに広がるので雨よけや笠かけは効果的である。袋かけの際には口をしっかりと締めて雨水の侵入を防ぐ。

 炭疽(たんそ)病は5月に1県、9月に別の1県から注意報が出されている。

枝病斑で病原菌越冬

 主に枝病斑で越冬した病原菌は翌年胞子を形成し降雨とともに広がり新梢(しんしょう)や幼果に感染する。新梢には黒色の斑点ができ斑点から雨水で飛散した胞子が枝や 果実に感染を繰り返す。新梢が発生し始める時期から果実肥大期にかけての防除が必要である。薬剤散布の際にはむらが生じないよう丁寧に作業を行う。

カキ炭疽病