JA全農の取り組み〜ザルビオ®フィールドマネージャー

JA全農　耕種総合対策部　スマート農業推進課

栽培管理支援システム　ザルビオ®フィールドマネージャー

さまざまなデータＡＩで分析 作業適期をお知らせ

　ザルビオ®フィールドマネージャー（以下、ザルビオＦＭ）は、品種、栽培方法、気象状況、人工衛星画像など、さまざまなデータをＡＩ（人工知能）が解析し、施肥、防除などの作業時期を知らせるシステムである。２０２１年４月より水稲および大豆でサービスを開始し、現在園芸作物や小麦など対象作物を増やしている。ザルビオＦＭはパソコンやスマートフォンで利用でき、主な機能は①作物の生育ステージ予測機能②病害アラート、大豆雑草管理プログラムや散布天気予報など防除を支援する機能③人工衛星画像による生育や地力状況の見える化と施肥マップの出力――の３機能である。

　ここでは防除対策に活用できる主要な機能として、「①作物の生育ステージ予測機能」「②病害アラート、大豆雑草管理プログラムや散布天気予報など防除を支援する機能」を紹介する。

作物の生育ステージ予測　防除重点時期も前もって

　水稲、大豆、麦で実装されている機能で、品種、天候などから作物の生育ステージの推移を予測する機能である。ザルビオＦＭに品種や播種（はしゅ）日／移植日を入力するとＡＩが栽培期間中の作物の生育ステージの予測を提示する。これにより、水稲であれば幼穂形成期や出穂期、麦においては開花期など防除重点時期を前もって予測できるため、防除計画を効率よく、適切に立てることができる。

小まめな観察の多大な労力軽減

　近年の水稲栽培では、夏場の曇天によっていもち病の発生が多く認められる地域が増え、また、毎年のように斑点米カメムシの対策も課題となっている。これら水稲病害虫の一般的な防除体系として、育苗箱処理剤による初期の防除に加え、出穂期とその７～10日後に本田防除を実施する基幹防除が推奨されている。

　しかし、近年の変動の大きい気象条件のもとでは、水稲の出穂期が平年値からずれることがしばしばあり、防除適期の把握には小まめな作物状況の観察が必要となり多大な労力がかかる。

　一方、ザルビオＦＭは、当該圃場（ほじょう）付近の気象予報データを使うため、気象条件も考慮して圃場ごとの出穂期を予測することができる。このような生育予測機能を使い、防除適期の最適化とスケジュール作成の効率化に役立つ。

病害アラート、大豆雑草管理プログラムや散布天気予報など防除を支援する機能　発生リスク４日先まで

　病害アラート機能は水稲の主要病害であるいもち病や紋枯病、麦の重要病害である赤かび病などの発生リスクを４日先まで予測する。これにより、基幹防除時期以外の臨機防除にも対応しやすくなり、防除適期を逃さず防除が可能となる。

　22年度の水稲での実証試験では、例年６月下旬にいもち病の防除が推奨される地域において、天候不順によりいもち病の発生が例年と比べ早まったが、ザルビオＦＭが６月中旬にアラートを出したことでいもち病のまん延を防ぐことができ、慣行防除区と比較して収量、品質共にも向上した事例も確認できている。

難防除雑草で有効

　大豆では、最適な雑草防除体系を提示する雑草管理プログラム機能がある。この機能は、ザルビオＦＭに当該圃場で問題となる雑草種や栽培条件を登録することにより、圃場ごとに最適な雑草防除体系が提示され、大豆の生育ステージに応じて、適期に防除作業をアラートするものである。これにより雑草種に応じた最適な薬剤選択や最適なタイミングでの除草剤散布、中耕培土などの防除作業を効率よく行うことができる。

　大豆栽培では、帰化アサガオなどの外来雑草の繁茂が収量減の一大要因となっているが、これらの雑草は発生期間が長く、生育が進むと除草剤の効果が発揮されにくいため、難防除雑草に位置づけられている。雑草管理プログラム機能を使えば、ユーザーの手元に適期にアラートが届くため、気が付いた頃には雑草が大きくなり過ぎて手遅れになってしまったというケースを予防することができる。

散布時間帯も提示

　散布天気予報は通常の天気予報に加えて、薬剤散布に適した時間帯を示す機能である。１時間ごとの降水確率や風速をＡＩが分析し、日ごとに農薬散布に適した時間帯を示す。どの時刻に作業を行うとドリフトリスクや降雨の影響が少ないかを判断するのに役立ち、効率的な防除計画を立てることができる。

　ザルビオＦＭの詳しい内容やご利用方法についてはホームページや問い合わせ先にご連絡ください。