JAさいたま
水稲たん水直播でBS実証
野菜や果樹にも効果を期待

2025.08.26

 JAさいたまでは水稲や野菜、果樹など、10種類以上のBS資材の実証試験を行う。6月上旬にはJA管内の伊奈町で新たに、バイオスティミュラント(BS)資材を粉衣させたもみ種をドローンで播種(はしゅ)する水稲たん水直播栽培の実証試験を始めている。数々の実証試験に取り組む同JAの営農企画課の戸井田康隆課長に実証内容やBS資材について話を聞いた。

取材時の田面(7月25日、埼玉県伊奈町で)

もみ種に3種類のBS粉衣

 実証試験は、水田約70aで行った。播種前日に、JA営農企画課の職員が水稲品種「彩のかがやき」のもみ種40㎏に3種類のBS資材と鳥害対策用資材を粉衣させた。
 BS資材は、①稲の根に共生し「菌根」を形成させて土中の菌糸から根張りを良くするカビの一種で、特にリン酸と水の吸収を促進するもの②ビール酵母由来で、発芽を促進し気象や土壌の悪環境下でも生産を安定させるもの③植物が吸収しやすい二価鉄をキレート化し安定させて光合成能力の向上を狙ったもの――の3種。これらに鳥害対策資材を混和した。
 DJI製のドローン「AGRAS T10」でもみ種を散播後、すぐに水稲たん水直播栽培専用の初期除草剤(粒剤)を散布。両作業合わせて1時間ほどで終了した。

ドローンによる播種(6月5日、埼玉県伊奈町で=JAさいたま提供)

たん水直播3日後に出芽

 BS資材の効果は、すぐに現れた。芽出しをせず、普通の乾いたもみ種にBS資材を粉衣させ、ドローンで散布しただけだが、3日目には芽が出てきた。
 「彩のかがやき」の一般的な発芽の積算気温は100〜120度と言われている。発芽まで水温が10度で10日、15度なら7日ほどかかってもおかしくない。それがBS資材の働きにより、発芽が促進されたと考えられる。
 例えば、①の資材は、稲の根から菌糸を伸ばし、従来は根の範囲でしか吸収できなかった養分や水分を、より広い範囲から取り込めるようにしている。特にリンの吸収に優れ、カリウムやミネラル、水分も効率よく吸収できるため、近年注目されている超節水型乾田直播で活用されている。この資材は、根の張りや長さを大きく向上させ、乾燥や高温などのストレスによる生育阻害も軽減する効果が期待されている。
 ①の資材は乾田での利用が最適であるが、たん水や移植水稲にも使えるのが利点だ。試験では中干しまでは水を張り、草を抑え、中干し後は水を入れず菌の力で稲刈りまで乾田状態を維持する。これにより田んぼが固まり、コンバインが埋まるリスクを減らせる。水を使わないことで作業効率も向上し、高温障害にも効果が期待できる。②③の資材も同様に、試験が順調に進んでおり、その効果への期待は大きい。

播種3日後の田面㊧播種5日後の田面㊨(JAさいたま提供)

高温対策に最適なBS模索

 稲作以外のBS資材は、3~4年前に販売会社から提案を受け、果樹や露地野菜で初めて試験的に導入した。組合員から「高温障害への対策に土壌診断や施肥に加えて、何かできることはないか」と相談があったことも、後押しとなった。
 実際の効果は圃場(ほじょう)によって異なり、シャインマスカットを栽培するブドウ農家では好評でリピートされているが、農家の中には「効果が感じられなかった」という意見もある。目に見えて分かる効果が出にくいのが課題で、現在もさまざまなBS資材を試しながら、最適なものを模索している段階だ。
 今年はたん水直播の実証とは別に、有機汚泥から微生物を抽出したBS資材の導入試験を進めている。主な目的は高温対策で、約10カ所で試験中だ。この資材は1500種類もの微生物を含み、葉面散布や土壌混和などさまざまな方法で利用できる。水稲の中干し前に流し込み、高温障害やガス発生の抑制を試みており、果樹や露地野菜、今後はニンニク栽培にも活用予定だ。高温が厳しい地域の秋冬野菜の苗作りにも効果を期待している。
 BS資材は、今後もさまざまな作物で効果を検証し、最適な資材を見極めていく予定だ。

根張りを確認する戸井田課長㊧と清水貴寛主任(7月25日、同)
生育が旺盛な側根(7月25日、同)

ガイドラインの受け止め 「大変意味のあること」

JAさいたま 営農企画課

 農林水産省のガイドラインについて、どのように受けとめているかをJAに聞いた。
 ガイドラインの主なポイントである「効果や使用方法の明確な記載」「科学的なデータで効果の証明」「安全性の確認」は、販売を担うJAにとって非常に重要だ。これらがガイドラインに盛り込まれたことは大変意味のあることだと受け止めている。
 購入者である農家にとっては、効果や安全性に関する記載や根拠がない商品は不安要素となり、購入に至らない可能性がある。実際、当JAで取り扱う資材の中にも、内容の記載が不十分なものがあったため、それに対して不安を感じた農家もいた。
 BS資材については、「信じがたい効果」の話を耳にすることもあるが、そうした効果に対して科学的根拠を示すことができれば、農家の信頼を得て、購入量の増加につなげることが期待できる。