株式会社ACWパートナーズ 代表取締役 大國 仁
台頭するBRICS※や米国大統領選挙が及ぼす世界情勢の変化、貿易や商取引の仕組みの進化、一般消費者の食や農業への興味の高まり、国内の労働者不足などJAを取り巻く環境が大きく変わるため、今回のJA全国大会は大変重要な大会になると考えています。
今回の大会のスローガン「組合員・地域とともに食と農を支える協同の力 ~協同活動と総合事業の好循環~」では、国内の食料供給を協同組合で担っていこうという熱意を感じます。日本の農業産業にとってJAが重要な存在になるということではないでしょうか?
まず前回の大会からの流れと変化を捉えた上で、今回の協議案の全体像と重要なところを確認し、最後に最も肝になるJAの経営基盤を強化するためのヒントを紹介します。
※ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの頭文字をとった呼称
前回大会からの流れと変化
今回の協議案の五つの戦略と前回大会のポイントの関係は図1のように読み取れます。前回はポイント、今回は戦略ということで、前回の方が具体的でした。今回はJAが志をより高く持ち、視野をより拡げて考える必要があります。
まず「①食料・農業戦略」「⑤広報戦略」は前回のポイントから直接つながっているように見えます。「食料・農業戦略」では国産農畜産物の安定供給を実現し、「広報戦略」では、JAの存在意義、提供する価値について理解と共感を広めることから、JAが日本の農業を支える重要な立場になることを示しています。
残りの三つの戦略は前回から構成が変わっています。前回の「③不断の自己改革の実践を支える経営基盤の強化」が今回の「④経営基盤強化戦略」につながっていますが、その他に「②持続可能な地域・組織・事業基盤の確立」のうち事業基盤の確立の部分と「④ 協同組合としての役割発揮を支える人づくり」の役職者の人づくりの部分は、JAの経営基盤強化に融合されると思います。
前回の協議案のポイントの②と④では、対象が組合員とJAの両方に及んでいたため、正確に読み取ることが難しかったのですが、今回は分かりやすい構成になっています。「② くらし・地域活性化戦略」は組合員を対象に、「④経営基盤強化戦略」はJAを対象にしており、「③組織基盤強化戦略」は両者の対話による信頼関係の強化になっています。
今回の協議案の構造と重要な項目
今回の協議案は図2のような構造に見えます。左右に組合員と地域の人々を取り、組合員と地域の人々に貢献するための取り組みを進め、コミュニケーションによって信頼関係を強化するような構造です。組合員と地域の人々に貢献していくためには、④のJAの経営基盤強化が必要となります。
今回の協議案の中で重要だと思ったことを三つ挙げたいと思います。
①組合員や地域の人々とのコミュニケーションを重視している
②JAの存在意義、提供する価値への理解と共感に触れている
③JAの持続性を高めるため、財務・収支の改善の必要性がうたわれている
一つ目については、JAから離れる農業者や農業法人、それからJAとその役割を知らない一般の人々の顔が浮かびます。JAに対して悪い印象が持たれていると残念に感じることがあります。JAの取り組みや貢献についてしっかり伝えていくと共に、誤った情報は正す必要もあると思います。
二つ目のJAの存在意義、提供する価値は、一つ目のコミュニケーションの中身として大変重要なことです。また、特に大規模に経営している農業者ほどJAから離れていくことが多いと聞きます。栽培に関する指導だけでなく、法人経営や雇用導入など経営面についての助言も行い、組合員が農業を営む事業者として成長できるような価値を提供することが求められます。これまでに掲げてきた存在意義や提供価値を再定義する時期が来ていると思います。
そのことは三つ目に挙げたJAの財務・収支の改善にも大きく関わっています。これまでのJAへの支援を通じて、過去の延長線上の考え方では営農・経済事業を黒字にすることは難しいと痛感しました。信用・共済事業で収支を合わせることができず、協同組合を維持できなくなるJAが増えるのではないかと危惧しています。
収支の悪化はJAの利用料の値上げにもつながりかねません。組合員の負担を増やすような事態になると、特に大規模な農業者や農業法人はJAから離れていきます。家族や雇用者の生活を支えるために必死だからです。さらなる収支悪化から組合員のさらなる負担増という悪循環になると、衰退は加速するでしょう。
今回の協議案の構造と重要な項目
今回の協議案は図2のような構造に見えます。左右に組合員と地域の人々を取り、組合員と地域の人々に貢献するための取り組みを進め、コミュニケーションによって信頼関係を強化するような構造です。組合員と地域の人々に貢献していくためには、④のJAの経営基盤強化が必要となります。
今回の協議案の中で重要だと思ったことを三つ挙げたいと思います。
①組合員や地域の人々とのコミュニケーションを重視している
②JAの存在意義、提供する価値への理解と共感に触れている
③JAの持続性を高めるため、財務・収支の改善の必要性がうたわれている
一つ目については、JAから離れる農業者や農業法人、それからJAとその役割を知らない一般の人々の顔が浮かびます。JAに対して悪い印象が持たれていると残念に感じることがあります。JAの取り組みや貢献についてしっかり伝えていくと共に、誤った情報は正す必要もあると思います。
二つ目のJAの存在意義、提供する価値は、一つ目のコミュニケーションの中身として大変重要なことです。また、特に大規模に経営している農業者ほどJAから離れていくことが多いと聞きます。栽培に関する指導だけでなく、法人経営や雇用導入など経営面についての助言も行い、組合員が農業を営む事業者として成長できるような価値を提供することが求められます。これまでに掲げてきた存在意義や提供価値を再定義する時期が来ていると思います。
そのことは三つ目に挙げたJAの財務・収支の改善にも大きく関わっています。これまでのJAへの支援を通じて、過去の延長線上の考え方では営農・経済事業を黒字にすることは難しいと痛感しました。信用・共済事業で収支を合わせることができず、協同組合を維持できなくなるJAが増えるのではないかと危惧しています。
収支の悪化はJAの利用料の値上げにもつながりかねません。組合員の負担を増やすような事態になると、特に大規模な農業者や農業法人はJAから離れていきます。家族や雇用者の生活を支えるために必死だからです。さらなる収支悪化から組合員のさらなる負担増という
組合員とともに
未来のありたい姿を目指す
最後に、戦略とは「手段」です。何のための手段であるかというと、「地域農業や協同組合の未来のありたい姿を実現する」ための手段です。今回の大会後に、各JAが地域の組合員との対話によって、どのような地域をつくっていきたいのか、地域の農業をどのように守って強めていきたいのか、そしてどのような協同組合をつくっていきたいのかを徹底的に話し合って、具体的な文章に落として認識を共有しながら進むことが大切です。
[執筆者紹介]
株式会社ACWパートナーズ
代表取締役
大國 仁
自動車メーカーでマーケティングを経験した後、経営コンサルタントに転身。主に企業の全社改革を支援。近年は農業法人やJAへ実践的な研修を行っている。著書に『営農・経済事業でつくり、つなぐ未来の農業』(全国共同出版)がある。