春夏作型向け 品種選びと最新動向

2024.07.22
農研機構 野菜花き研究部門 野菜花き品種育成研究領域 露地野菜花き育種グループ 研究員 藤戸 聡史

 春夏ネギの安定生産には産地に適した品種選びや栽培管理が重要だ。農研機構・野菜花き研究部門の監修で各種苗メーカーが進める春夏作型向けの品種リストと品種選びのポイント、猛暑に対応した栽培の注意点を紹介する。

耐暑性と付加価値を考慮

 

 春から夏に収穫する作型に適したネギの品種は数多く育成されており、用途や目的に応じた品種を選定することができる。春ネギでは、抽台(ちゅうだい)のリスク回避のために晩抽性品種を選び、各地域に適した収穫時期と播種(はしゅ)時期を厳守し、極端な早播きは避けることが重要である。
 夏ネギでは、収穫期に多発する病害虫によって収穫遅れが懸念されるため、耐病性の高い品種を選び、適切な防除が求められる。
 春夏ネギは、ネギの端境期に出荷することが可能なため、単価は秋冬ネギより高く推移している。東京都中央卸売市場の2022年のネギ入荷実績では、春夏ネギは秋冬ネギに比べて入荷量が4分の3、単価が1.2倍と平年並みだった。ただ、23年は夏季の干ばつや記録的な高温により、9~11月にネギの入荷量が大幅に減少したことから、単価が高騰した。
 気象庁の発表によると、24年7~9月の3カ月の平均気温が全国的に平年と比べて高くなることが予想されている。地球温暖化による平均気温の上昇や異常気象は今後も発生する可能性があることから、品種の耐暑性は重要となる。
 春から夏に増加する主な病害虫として、ネギアザミウマ、ネギハモグリバエ、ガ類、さび病、べと病、軟腐病、白絹病が挙げられる。平均気温の上昇により、これらの病害虫の発生時期が拡大する可能性があるので注意が必要。病害虫の防除は農薬散布が主体となっているため、それぞれの地域で病害虫発生予察情報などを参考に、発生状況を基に適切に防除することが被害減少につながる。また、間接的に病害虫の発生を拡大させる原因となる圃場(ほじょう)の雑草や残さを適切に管理することも大切だ。
 そのほか、コンパクトさ(葉身の長さ)やヌルの量、少肥栽培・減肥栽培が可能かなど管理作業の容易さに関わる形質や、良食味などの付加価値を基に品種を選定することもできる。地域や栽培体系などに応じて求められる特性を基に最適な品種を選定し、病害虫防除などの栽培管理を適切に行っていくことで、安定生産が期待できる。

農研機構 野菜花き研究部門
野菜花き品種育成研究領域
露地野菜花き育種グループ
研究員
藤戸聡史