記者の目 日本農業新聞 営農生活部

2022.12.02

高温で裂果が課題に 遮熱や遮光対策徹底を

日本農業新聞 営農生活部

 温暖化の進行で、夏秋トマト栽培は、高温下で発生しやすい裂果が課題になっている。専門家によると、へたから亀裂が入る「放射状裂果」の発生が目立つという。遮熱や遮光といった暑熱対策の重要性が高まっている。

高温により放射状裂果が起こったトマト(静岡大学提供)

 農水省が都道府県の報告を基にまとめた「地球温暖化影響調査レポート」によると、2021年にトマトの裂果を含む「不良果」を報告した都道府県は12あった。前年と並び、調査を始めた07年以降で過去最多だった。
 同省は、5~11月の生育期から収穫期の高温が要因と分析する。21年の平均気温は全国的に平年より高く、特に北日本と西日本で高かった。同年は、高温によるトマトの着花・着果不良や、生育不良や病害、生理障害などの報告も目立った。

裂皮が起きたトマト(同)

 トマトの裂果は、水分や光合成によってできた糖類などが果実内に過剰に流れ込むことで起こる。果実が小さかったり、色づいていなかったりする段階で高温や強い直射日光に遭うと、果実の温度が上がって細胞分裂の回数が減少。表皮の細胞数が減って割れやすい状態になるという。

 高温下で裂果が発生しやすいのは、このためだ。トマトの生理障害に詳しい静岡大学の鈴木克己教授は「平均気温が25度前後から発生しやすくなる傾向がある」と指摘する。裂果の中でも、へたから裂ける放射状裂果の発生が目立つという。

 裂果を防ぐため、既に多くの産地で遮光・遮熱ネットや循環扇といった資材の活用が進んでいる。冷房もできるヒートポンプや細霧冷房による冷却、かん水の制限、裂果前の収穫、裂果が発生しにくい品種を選ぶことなども対策となる。

 細胞分裂を促すフルメット液剤の活用も有効だ。鈴木教授によると、幼果の果実径が3、4センチ大になった時を目安に処理するのが効果的。ただ、高温時の処理は避ける。果実に白い斑紋が発生する場合があるという。薬剤費と散布の手間もかかるため、放射状裂果が多発しそうな時期の若い果房に使うことを勧める。

 果実の表面に細かい亀裂が入る「クチクラ裂皮」にも注意が必要となる。表面に細かい薄茶色の筋ができ、見栄えが悪いため価値を落とす。果実表面への強い光が原因と考えられており、遮光や紫外線除去フィルムの利用などが対策となる。

クチクラ裂皮が発生したトマト(同)

 収穫間際の果実の皮が裂ける裂皮も目立つ。放射状裂果と同様に果実への急激な水分の流入が原因だ。夜間に葉から果実への転流が活発になると割れる。温湿度が大きく変化しても割れやすくなる。かん水量の制御や、換気、ミストの管理が必要だという。